[知って安心。きもの豆知識]

きものの種類とTPO

Types of kimono & appropriate clothing for the Time, Place, and Occasion

「きものは着たいけど、ルールとかいろいろ難しそう…」といった言葉をよく耳にします。
確かに、“こういう席ではこういう装いで”といった決まりごとは、ある程度ありますが、きものって“もっと自由で楽しいもの”だと、私たちは考えています。

こちらのページでは、ルールやマナーといった堅苦しいものではなく、
知っていると安心な “世間一般の決まりごと” について、わかりやすくご紹介いたします。

◎茶道などお稽古事の場合は、流派によりルールが異なる場合があるので、先生に確認するのが良いでしょう。

きものの種類

 着物には、大きく分けて「染めの着物」と「織りの着物」があります。
「染めの着物」は、織り上げられた“白生地”の上に、染めて色柄を表現しており、「後染(あとぞめ)」とも呼ばれます。一方、先に糸を染めてから織り上げて色柄を表現する「織りの着物」は「先染(さきぞめ)」と言われます。

 洋服にカジュアルなシーンで着るデニムやTシャツ、ちょっとよそゆきのワンピース、キチっとした印象を与えるスーツや、友人の結婚式で着るドレスなど様々な種類があるように、着物にも様々な種類があります。それでは、まずはじめに代表的な「着物の種類」をご紹介します。

|染めのきもの(後染)

 染めの着物は、留袖や振袖、訪問着をはじめ、色無地・小紋といった「フォーマルな席にあう格式の高い着物」が多いのが特徴です。染めの着物は手触りがよく、柔らかな風合いがあるため「やわらかもの」と呼ばれることもあります。

振袖

Furisode

#成人式

#結婚式

#お正月

#謝恩会

#卒業式

#パーティー

#結納

#お見合い

#祝賀会

 振袖は、未婚女性(ミス)の第一礼装(礼装では最も格が高い)として着用される、袖の長い着物です。最近では、未婚や既婚の制約は薄まってきており、年齢に関わらず着用されることもあります。主に、新成人の式典である成人式や、結婚式への参列、卒業式の袴に合わせてなど、ハレの席で着用されます。

 現在の形に近づいたのは、江戸時代と言われており、現在でも使われる「振る」「振られる」という言葉は、振袖の袖を感情表現につかっていたことが由来ともいわれます。

 また、振袖には袖の長さによって「大振袖(本振袖)」「中振袖」「小振袖」の3種類あります。「大振袖」は、袖が3種類の中で最も長く、袖の丈が着る人のふくらはぎ位まであるのが特徴で、格が最も高いとされ、主に花嫁衣装としても着られます。「中振袖」は大振袖の次に格が高く、袖の長さは膝の辺りほどで、現在、一般的な振袖の長さとされています。また「小振袖」は、身長の半分ほどの袖の長さで、卒業式に袴と合わせたものなどで馴染みがあるかと思います。

黒留袖

Kuro-tomesode

#結婚式

#新婦の母

#新郎の母

#新婦の親族

#新郎の親族

#仲人

 黒留袖は、既婚女性(ミセス)の第一礼装(礼装では最も格が高い)として着用される着物です。地色は黒色で、裾に縁起の良い吉祥文様があしらわれており、五つ紋(背中・両胸・両後袖)が入っています。紋は元来「家紋」を用いますが、紋を使う機会も減り、自分の紋がわからないという方も増えています。そのような場合、誰でも使用できる「通し紋」を使うと良いでしょう。

 結婚式・結婚披露宴では新郎新婦の「母親」は黒留袖を着用します。既婚の姉妹や、祖母、伯母(叔母)も第一礼装が相応しい立場ではありますが、最近では、黒留袖ではなく、色留袖や訪問着を着用するケースが多くなってきていますので、新郎側と新婦側、それぞれの親族同士で相談して、格を揃えると良いでしょう。

色留袖

Iro-tomesode

#結婚式

#格の高いパーティー

#授賞式

#正式なお茶会

#祝賀会

 色留袖は、既婚(ミセス)・未婚(ミス)問わず着用できる礼装・準礼装の着物です。上半身は無地で紋が入り、帯から下にかけて絵羽模様の柄づけが施されています。地色は黒以外の様々な色の着物で、明るい色調でお祝いの席を華やかに彩ります。紋の数によって格が異なり、五つ紋(背中・両胸・両後袖)の場合は新郎新婦の母親や親族が着る黒留袖と同格の第一礼装、三つ紋や一つ紋は準礼装とされます。

 主に新郎新婦の姉妹や、叔母や伯母などといった近い親族が、結婚式・披露宴で着用することが多いです。また、結婚式のほか、叙勲の授賞式や正式なお茶会など格式の高い場で着用されます。

黒紋付

Kuro-montsuki

#葬儀式

#告別式

#お通夜

#卒業式

#正式なお茶会

 黒紋付は、黒地の無地の着物に五つ紋を入れた最も格式の高い第一礼装です。主に喪の席における最上格の着物として着用されます。また、男性は羽織と袴を合わせた「紋付羽織袴」として着用します。

 近年では、黒紋付=葬式や告別式で着用する喪服とのイメージが強いですが、本来は不祝儀のための着物というわけではありません。今でも、宝塚音楽学校の卒業式では、黒紋付に袴を合わせて着用しています。

訪問着

Houmongi

#結婚式

#記念式典

#お正月

#授賞式

#祝賀会

#パーティー

#入学式

#卒業式

#お正月

 訪問着は、既婚(ミセス)・未婚(ミス)問わず着用できる準礼装(略礼装)の着物です。結婚式などへのおよばれや、お子様の入学式・卒業式、ご成人を迎えるお嬢様のお母様が着用して家族写真記念撮影など、ある程度お祝いの席で着用する機会の多い着物です。黒留袖や色留袖は、上半身が無地で紋が入っているのに対し、訪問着は、肩から袖に向かって大きく柄があしらわれているのが特徴です。

 一つ紋を入れることで、格式が上がりますが、幅広いシーンで着用するよう、紋を入れないことの方が多いです。訪問着には、縁起の良い吉祥紋様が使われていることも多く、その意味合いもお祝いの席などにもふさわしい着物です。

付下げ

Tsukesage

#結婚式

#記念式典

#お正月

#パーティー

#入卒

#七五三

#お茶会

#お食事会

#観劇

 付下げ(付下げ訪問着)は、訪問着に次ぐ格の高さがあり、略礼装としてハレの席にお召しいただけます。帯の格を上げ下げすることで、華やかな席から落ち着いたシーンまで幅広く着用できる優れものです。付下げ(付下げ訪問着)は、仕立てる前の状態が、丸巻き(反物)の状態となっており、仕立て上がった状態では、訪問着と区別がつかないものが多いです。

 訪問着との見分け方は、裏地の違いです。裏地(八掛)が着物の表地と同じ生地を用いて染められた「共八掛(ともはっかけ)」を用いているのが訪問着で、付下げ(付下げ訪問着)は、表地とは異なる生地で作られた八掛を用いています。

色無地

Iro-muji

#結婚式

#七五三

#お正月

#お稽古

#入卒

#お茶会

#お食事会

#観劇

#法事

 白生地を黒以外の色で染めたもので、柄のない着物を色無地といいます。生地自体に地紋(織模様)の入ったものなどもあり、印象が生地によって変わります。紋を入れる(一般的には一つ紋)ことで格が上がり、準礼装として着用できます。最近では汎用性を求めて紋を入れない方も多くいらっしゃいます。袋帯を合わせてハレの席に、名古屋帯を合わせてお稽古やお食事会などにもお召しいただけます。また、地色が暗いものなら、喪の帯(黒共名古屋帯)と合わせて略式的な喪服とすることも可能です。

 また、色無地は、合わせる「帯や小物」で印象がガラリと変わり、飽きがこず、その時々で様々な装いを楽しむことができるのも魅力の一つです。

小紋

Komon

#お正月

#お稽古

#お食事会

#観劇

#女子会

#同窓会

 小紋とは、着物全体に細かな模様が繰り返し染められた着物で、主にカジュアルなお出かけ着や普段着として着用されます。フォーマルな席には向きませんが、江戸小紋など色無地感覚のものは、一つ紋を入れることで、準礼装としてお召しいただけます。

 柄や模様に決まりはなく、洋服でいうと、柄物のワンピースのようなものです。その色柄は多種多様で、自分の好みにあった色柄の小紋を自由に楽しみましょう。

|織りのきもの(先染)

 織りの着物は、紬や木綿の着物、ウールの着物といった「カジュアルシーンにあう普段着」が多いのが特徴です。糸を先に色で染めて、その糸を織っていくことで着物の色柄を作ります。糸の素材は絹や木綿、麻などさまざまありますが、その着物を作る日本各地の産地(さんち)によって糸を染める材料や織り方に工夫が凝らされています。

Tsumugi

#お正月

#お出掛け

#お食事会

#観劇

#女子会

#同窓会

#美術館巡り

 紬は、先染めの糸で柄を織り出す絹織物のことを指します。丈夫で、普段着・おしゃれ着として、普段のお出掛けや、観劇、ショッピング、お食事会、美術館巡りなど様々なカジュアルシーンを彩り豊かにしてくれます。

 紬には、日本各地に「さんち」があります。茨城県の結城紬、鹿児島県 奄美大島の大島紬などが代表的な紬です。それぞれ独自の風合いで、長い歴史を持ち、伝統に裏打ちされた魅力があります。

御召

Omeshi

#お正月

#お出掛け

#お食事会

#観劇

#女子会

#同窓会

#美術館巡り

#お茶会

#パーティー

 御召は、紬と同じく絹織物の着物で、強い撚りをかけた糸「強撚糸」をしているのが特徴です。独特のシボ(凹凸)とシャリ感のある風合いが魅力で、紬よりも格が上とされています。そのため、日常の延長の中で、お呼ばれ等のお席やお茶席にもご着用いただけることも特徴の1つです。袋帯・名古屋帯・半巾帯・ヘこ帯等、様々な帯を合わせていただけます。諸説ありますが、江戸時代に、第11代将軍 徳川家斉が好んで着用したことから「将軍様のお召し物」と呼ばれ、それが「御召」の由来になったとも言われています。

木綿

Momen

#お正月

#お出掛け

#お食事会

#観劇

#女子会

#同窓会

#美術館巡り

 木綿の着物は、吸水性や通気性がよく、肌にまとわりつかずに「サラリ」とした着心地で、カジュアル着物の定番として多くの人に親しまれています。その秘密は、木綿の「糸」や、各産地が長年培ってきた技によるものが多いですが、「着れば着るほど自分の体に馴染んでくる」と言われます。デリケートな正絹に比べ、木綿着物には強さもあり、ご自宅でも洗える扱いやすさも魅力の1つ。また、木綿の持つ「手仕事のぬくもり」を感じさせてくれる素材感は、他の素材には無いナチュラルな印象を与えてくれます。尚、やまとのオリジナル木綿着物は、農薬や殺虫剤を使わずに作られた環境に優しいオーガニックコットン糸を使用しています。

 木綿着物は、「単衣(ひとえ)」でお仕立てします。通常、単衣というと着用時期が短いように思われますが、木綿着物は「盛夏以外」お召しいただけます。寒い季節にはインナーやアウターなどで調整すると良いでしょう。

ウール

Wool

#お正月

#お出掛け

#お食事会

#観劇

#女子会

#同窓会

#美術館巡り

 ウールの着物は、その名の通り、羊毛(ウール)で織られた着物のことです。普段着として気軽にお楽しみいただけます。保温性・保湿性に優れているため、特に秋先から春にかけて多く着用されます。ウールの着物は、「単衣(ひとえ)」でお仕立てします。通常、単衣というと着用時期が短いように思われますが、ウールの着物は「夏以外」お召しいただけます。寒い季節にはインナーやアウターなどで調整すると良いでしょう。

 また、ウールの着物には、絹糸を織り交ぜ、生地に光沢感がある「シルクウール」や、化繊や絹を織り交ぜることで夏でも着用できる「サマーウール」など、いろいろな種類があります。

|染織 “さんち”の紹介

 日本には、世界に誇る着物の「さんち」があります。長い歴史に裏付けされた確かな技術と、ものづくりへの想いを大切にしながら、各さんちでは日々研鑽を重ねています。やまとは、そんな「さんち」と共に、長くものづくりをしてきました。ここでは、やまとが扱う染めの着物・織りの着物の主なさんちをご紹介いたします。

きもののTPO

|図解!TPOに合わせたきもの選び

Scroll

帯の種類と組み合わせ

 洋服にドレスやワンピース、ジーンズなど、TPOに合わせた装いがあるように、着物や帯にも、フォーマルシーンに映えるもの、カジュアルシーンに向いているものがあります。また、ジャケットにデニムを合わせてカジュアルダウンするように、TPOや気分で帯を使い分けることで、同じ着物でも幅広いシーンで楽しむことが出来るのも、着物遊びの醍醐味と言えます。

 お気に入りのきものも、帯ひとつ変えるだけでガラッと印象が変わります。着物の世界では、「着物一枚に帯三本」などという言葉もあるように、帯はコーディネートの決め手。 ここでは、帯の種類と、基本的なきものと帯の組み合わせ方をご紹介します。

|織りの帯と染めの帯

 帯が「織り」か「染め」によって、フォーマル・カジュアルの区別もあるといわれています。一般的に、「染めの帯」は普段着向きとされ、「織りの帯」は、染め帯よりも格が高いと言われています。特に金糸・銀糸などを織り込んだ帯はフォーマルシーンに向いています。 ちなみに、着物はその逆で、染めのきものは、留袖や訪問着など格の高いきものに多く、織りの着物は紬や木綿の着物など普段着、おしゃれ着に多いです。

|帯の種類

袋帯

Fukuro-Obi

[合わせる着物]

振袖

黒留袖

色留袖

訪問着

付下げ

色無地

(小紋)

(御召)

(紬)

 袋帯は、帯の中でも格式が高く、主にフォーマルな席で用いられます。表地と裏地を別々に織り、袋状に仕立てることから袋帯と呼ばれます。帯の長さは、約4.3m前後あり、お太鼓を二重に重ねた「二重太鼓」という帯結びが一般的です。二重太鼓には「喜びが重なりますように」の意味が込められています。また、袋帯は、金糸や銀糸を用い、吉祥文様など華やかな柄が施されたものが多いですが、中には、カジュアルシーンに向けた「しゃれ袋」と呼ばれるものもあります。

名古屋帯

Nagoya-Obi

[合わせる着物]

付下げ

色無地

小紋

御召

木綿

ウール

 名古屋帯は、袋帯を簡略化して作られた帯で、大正時代に名古屋の女性が考案したことから、名古屋帯と呼ばれるようになりました。主に「一重太鼓」と言う帯結びが一般的で、カジュアルシーンに最適な帯です。また、名古屋帯の仕立て方には、「名古屋仕立て」「開き仕立て」「松葉仕立て」の3種類があります。

● 名古屋仕立て

手先からお太鼓になる部分までを半分に折って縫い合わせたもので、初心者でも結びやすいのが特徴です。ただし、胴回りの帯幅は自分で調節できないため、ご身長の高い方には、開き仕立てか松葉仕立てがおすすめです。

● 開き仕立て

帯全体を半分に折らず、そのままの状態でお太鼓の幅に仕立てます。帯幅を自由に調節できるため、ご身長の高い方などにおすすめです。

● 松葉仕立て

名古屋仕立てと開き仕立ての中間的な仕立て方で、手先の部分が半分に折られています。開き仕立て同様、帯幅を自由に調節できます。

京袋帯

kyo-Fukuro-Obi

[合わせる着物]

付下げ

色無地

小紋

御召

木綿

ウール

 袋帯のように表地と裏地を縫い合わせて袋状に仕立てられています。帯の長さは名古屋帯と同じくらいで一重太鼓結びに適しており、帯幅を調節できます。小紋や紬等のカジュアル着物のコーディネートに向いてます。

半巾帯

Hanhaba-Obi

[合わせる着物]

ゆかた

色無地

小紋

御召

木綿

ウール

 一般的に浴衣に合わせる帯としても馴染みのある帯です。ゆかたのみならず、小紋や紬、木綿着物などのカジュアル着物にも合わせていただけます。帯結びのバリエーションも豊富で、結び方によって、後ろ姿の印象が大きく変わるため、自由で個性が出しやすい帯です。素材も、正絹・綿・麻・ポリエステルと様々あり、それぞれ締め心地が異なります。半巾帯の幅は、一般的に約15cm〜16cm程ですが、さらに細い11cm〜13cm程度の「細帯」と呼ばれるものもあります。

兵児帯

Heko-Obi

[合わせる着物]

ゆかた

小紋

木綿

ウール

 兵児(へこ)帯は、帯の着装感が柔らかく、ふんわりとした感じの帯で、浴衣のコーディネートに良く使われます。初心者でも扱いやすく、様々な結び方でアレンジを楽しめるのも特徴の1つです。ゆかた用だけでなく、着物向きの兵児帯もあります。

 兵児の由来は、鹿児島地方の方言で「青年男性」を意味する「兵児」とも言われています。元々は男性用や子供用の帯として使われていましたが、現在では女性もカジュアルな着物スタイルに取り入れることが増えています。

|きものの種類に合わせた帯選び

 着物の種類に応じて、合わせる帯選びも変わってきます。一般的には、「染めの着物に織りの帯」「織りの着物に染めの帯」の組み合わせが良しとされています。

Scroll

Topics/紋のおはなし

 きものの種類とTPOを語る上で切り離せないのが「紋」のおはなし。紋の有無によって、着物の格も変わってきます。ここでは、紋の種類を中心にご紹介していきます。

|紋の種類 01

 きものの紋には、いわゆる自分の家の「家紋」と、家に関係なく誰でも使用できる「通し紋」、自分の好きな模様を刺繍や染めで表現した遊び心ある「おしゃれ紋」があります。

● 家紋

 古くは自分の家系、血統、地位などを表すために用いられてきた「家紋」。一般庶民の間で家紋が使われるようになったのは、明治維新の後とされています。家紋のデザインの数は膨大で、草花などの植物、鳥などの生き物、自然や道具、幾何学模様などがモチーフになっています。

● 通し紋

 昨今、「家紋」を使う機会も減り、自分の家の紋が分からないという方も多くなっています。そのような場合でも、誰でも使うことのできる紋が「通し紋」です。「通紋(つうもん)」とも呼ばれます。代表的な通し紋としては、「五三の桐」「丸に下がり藤」「丸に梅鉢」「丸に横木瓜」などが挙げられます。やまとの黒留袖/色留袖レンタルには、この「五三の桐」を使用しています。

五三の桐

丸に下がり藤

丸に梅鉢

丸に横木瓜

● おしゃれ紋

 おしゃれ紋とは装飾として用いられる、 刺繍を施した紋のことで、花をモチーフにした花紋などがあります。伝統的な家紋と比べて、 より軽やかで遊び心のある デザインが特徴です。きものやまとでは、ご購入いただくきものや羽織はもちろん、お手持ちのきものや羽織にも、お好みのおしゃれ紋をお選びいただき紋入れすることが可能です。

[ きものやまとオリジナル 洒落紋 ]

洒落紋/貝がら

洒落紋/菊

洒落紋/窓枠に鳥

洒落紋/かすみそう

|紋の数と格について

 紋には、「五つ紋」「三つ紋」「一つ紋」と数の違いがあり、数が多いほど格が高いとされています。一つ紋は背中の中央上部に付き、「背紋」と呼ばれます。三つ紋は背紋に加えて、両後ろ袖のに付きます。これを「袖紋」と呼びます。五つ紋は背紋と袖紋、さらに両胸にも付き、これを「抱き紋(胸紋)」といいます。

● 五つ紋

 最も格が高く、第一礼装である「黒留袖」と「黒紋付」には必ず「五つ紋」を入れます。また、親族の結婚式で「色留袖」を着用する際、「五つ紋」の場合は新郎新婦の母親や親族が着る黒留袖と同格の第一礼装、三つ紋や一つ紋は準礼装とされます。また、花嫁衣装として振袖を着る際に「五つ紋」を入れる場合もあります。色無地に五つ紋を入れるケースも稀にあり、格式高い正式なお茶会で用いられたりすることがあります。

[五つ紋を入れられる着物]黒留袖・黒紋付・色留袖・花嫁衣装(振袖)・色無地

● 三つ紋

 「三つ紋」は主に、色留袖など準礼装の着物に入れます。また、染め抜きの三つ紋を入れた色無地も準礼装として格の高いフォーマルな席にも相応しい装いとなります。三つ紋の位置は、背中の中央上部の「背紋」と、両後ろ袖2箇所の「袖紋」となります。

[三つ紋を入れられる着物]色留袖・色無地

● 一つ紋

 「一つ紋」は、背中に入れる「背紋」のみとなります。訪問着、付下げ、色無地、江戸小紋などに入れることで、準礼装の格となります。準礼装とは、礼装に次ぐ格式で、礼装ほどの正式な装いではないものの、あらたまった場面でも着用できます。

[一つ紋を入れられる着物]色留袖・訪問着・付下げ・色無地・江戸小紋

|紋の種類 02

 きものの紋を入れる加工方法にもいつくか種類があり、それによって格も変わってきます。大きくは、地色を染め抜く「染め抜き」と、色を染める「摺り込み」、刺繍で表現する「縫い」に分かれ、染め抜きが最も格が高いとされています。

● 入紋(いれもん)

 黒留袖や黒紋付などの黒染めの着物は、お仕立てする前の製品の状態の際、予め紋を入れる部分を白く丸く抜き残した「石持(こくもち)」というものがあります。その部分に、ご指定の紋を描き込む加工を「入紋」と言います。現在は、黒留袖・黒紋付ともに、石持がある製品が多くなっており、この入紋がメジャーとなっています。

[入紋を使う主な着物]黒留袖・黒紋付・男児七五三・祝着

● 染め抜き紋(色抜き紋)

 染め抜き紋は、抜紋とも呼ばれ、紋の形を地色から白く染め抜いたものに、ご指定の紋を描き込む技法です。家紋の入れ方の中では最も格式が高いとされています。予め紋を入れる部分を白く丸く抜き残した「石持(こくもち)」がついていない製品で格式高く紋を入れる際は、この色抜き紋となりますが、地色が濃い地で色抜きができない場合は、摺り込み紋がおすすめです。

[染め抜き紋を使う主な着物]色留袖・淡い地色の色無地

● 摺り込み紋

 摺り込み紋は、紋を入れる技法の1つで、紋型を用いて染料で紋を刷り込むように描く技法です。濃い地色の着物など抜染が難しい素材でも紋を入れることができるのが特徴です。紋入れの技法としては、色抜き紋や入紋の方が格上となります。

[色抜き紋を使う主な着物]色留袖・濃い地色の色無地・五才祝着・お宮参り着・合繊着物

● 縫紋(ぬいもん)

 縫紋は、紋を糸で刺繍して入れる技法です。色抜き紋や摺り込み紋より略式とされ、セミフォーマルなシーンで用いられます。代表的な縫い方には「けし縫い」「すが縫い」「相良縫い」があります。また、縫い紋の糸の色は、着物の色と同系色の濃い色や薄い色、または金糸や銀糸などが使われます。

[縫い紋を使う主な着物]色無地・訪問着・付下げ・江戸小紋・合繊着物

[けし縫い]

最も一般的な縫い方です。日本刺繍の技法の一つで、細かく短い針目で布の表面を埋めるように縫う技法です。針目が芥子(けし)の実のように見えることからこの名前が付けられました。

[すが縫い]

すが縫いは、日本刺繍の技法の一つで、絓糸(すがいと)と呼ばれる、光沢感のある細く撚った絹糸を用いて、紋を縫い表します。紋の陰影がハッキリと出るのが特徴です。

[相良縫い]

相良縫いは、生地の裏側から糸を引き出し、表で結び玉を作ります。この結び玉を連続させることで模様を形成する、重厚感のある縫い方です。玉にして結んでいく作業が縁を結ぶものと考えられ、縁起のいいものとして愛されています。

Topics/縁起柄について

 黒留袖や訪問着、袋帯といったお祝いの席で着用する着物や帯には「吉祥文様」と言われる縁起の良い柄が数おおくあります。夫婦円満や、長寿、繁栄などへの願いを込めた縁起の良い柄を身に纏って、お祝いの席を華やかに彩りましょう。ここでは、一部ではありますが、そんな縁起の良い柄をいくつかご紹介いたします。

[扇子] 繁栄・招福

末広がりの形は、先細りすることなくどんどん広がっていくことから、繁栄や招福の意味を持ちます。

[貝合わせ] 夫婦円満

蛤の貝殻は対になるもの以外とは合わないため、夫婦の絆や愛情を象徴します。

[花唐草] 子孫繁栄・長寿

唐草は、蔓が伸びて絡み合う様子から、子孫繁栄や長寿を意味し、花を加えることでさらに華やかで縁起の良い柄として親しまれています。

[七宝] 円満・調和・ご縁

七宝柄は、円形が途切れることなく繋がっていく様子から、円満な関係や調和、そして良いご縁を象徴すると言われています。

[御所車] 立身出世・富貴繁栄

御所車は、平安時代に皇族や貴族のみが使用できた乗り物で、富や権力、高貴さを象徴するものでした。

[藤] 子孫繁栄・不老長寿

「フジ」という名前が「不死」を連想させることから、不老長寿を象徴するとされています。長い藤のツルは、子孫繁栄といわれます。

[鶴] 夫婦円満・長寿

鶴は一度つがいになると、生涯を共に過ごすと言われており、夫婦の愛情や絆の深さを象徴します。 また、「鶴は千年、亀は万年」というように、鶴は長寿の象徴です。

[蜀江花紋] 夫婦円満

中国では「八」という数字は縁起が良いとされており、蜀江文様は恋愛成就、夫婦円満、延命長寿などを願う吉祥文様として、古くから珍重されてきました。

[華紋] 幸福・繁栄

華紋は、幸福、繁栄、長寿、高貴などの意味を持ちます。その歴史は長く、古くは中国やインドなどの影響を受け、日本に伝わったとされています。

[松] 永遠の命・不老長寿

松は一年を通して緑を保つ常緑樹であり、その力強い生命力から、不老長寿や永遠の命の象徴とされてきました。

[竹] 繁栄・成長

竹は成長が早く、まっすぐに伸びることから、繁栄や事業の発展を願う象徴とされています。

[梅] 出世・開運

梅は、他の花に先駆けて咲くことから、出世や開運の象徴とされます。また、厳しい寒さの中で花を咲かせる様より、生命力の強さを表し、病気を退ける象徴ともされます。