|紋の数と格について
紋には、「五つ紋」「三つ紋」「一つ紋」と数の違いがあり、数が多いほど格が高いとされています。一つ紋は背中の中央上部に付き、「背紋」と呼ばれます。三つ紋は背紋に加えて、両後ろ袖のに付きます。これを「袖紋」と呼びます。五つ紋は背紋と袖紋、さらに両胸にも付き、これを「抱き紋(胸紋)」といいます。
● 五つ紋
最も格が高く、第一礼装である「黒留袖」と「黒紋付」には必ず「五つ紋」を入れます。また、親族の結婚式で「色留袖」を着用する際、「五つ紋」の場合は新郎新婦の母親や親族が着る黒留袖と同格の第一礼装、三つ紋や一つ紋は準礼装とされます。また、花嫁衣装として振袖を着る際に「五つ紋」を入れる場合もあります。色無地に五つ紋を入れるケースも稀にあり、格式高い正式なお茶会で用いられたりすることがあります。
[五つ紋を入れられる着物]黒留袖・黒紋付・色留袖・花嫁衣装(振袖)・色無地
● 三つ紋
「三つ紋」は主に、色留袖など準礼装の着物に入れます。また、染め抜きの三つ紋を入れた色無地も準礼装として格の高いフォーマルな席にも相応しい装いとなります。三つ紋の位置は、背中の中央上部の「背紋」と、両後ろ袖2箇所の「袖紋」となります。
[三つ紋を入れられる着物]色留袖・色無地
● 一つ紋
「一つ紋」は、背中に入れる「背紋」のみとなります。訪問着、付下げ、色無地、江戸小紋などに入れることで、準礼装の格となります。準礼装とは、礼装に次ぐ格式で、礼装ほどの正式な装いではないものの、あらたまった場面でも着用できます。
[一つ紋を入れられる着物]色留袖・訪問着・付下げ・色無地・江戸小紋
きものの紋を入れる加工方法にもいつくか種類があり、それによって格も変わってきます。大きくは、地色を染め抜く「染め抜き」と、色を染める「摺り込み」、刺繍で表現する「縫い」に分かれ、染め抜きが最も格が高いとされています。
● 入紋(いれもん)
黒留袖や黒紋付などの黒染めの着物は、お仕立てする前の製品の状態の際、予め紋を入れる部分を白く丸く抜き残した「石持(こくもち)」というものがあります。その部分に、ご指定の紋を描き込む加工を「入紋」と言います。現在は、黒留袖・黒紋付ともに、石持がある製品が多くなっており、この入紋がメジャーとなっています。
[入紋を使う主な着物]黒留袖・黒紋付・男児七五三・祝着
● 染め抜き紋(色抜き紋)
染め抜き紋は、抜紋とも呼ばれ、紋の形を地色から白く染め抜いたものに、ご指定の紋を描き込む技法です。家紋の入れ方の中では最も格式が高いとされています。予め紋を入れる部分を白く丸く抜き残した「石持(こくもち)」がついていない製品で格式高く紋を入れる際は、この色抜き紋となりますが、地色が濃い地で色抜きができない場合は、摺り込み紋がおすすめです。
[染め抜き紋を使う主な着物]色留袖・淡い地色の色無地
● 摺り込み紋
摺り込み紋は、紋を入れる技法の1つで、紋型を用いて染料で紋を刷り込むように描く技法です。濃い地色の着物など抜染が難しい素材でも紋を入れることができるのが特徴です。紋入れの技法としては、色抜き紋や入紋の方が格上となります。
[色抜き紋を使う主な着物]色留袖・濃い地色の色無地・五才祝着・お宮参り着・合繊着物
● 縫紋(ぬいもん)
縫紋は、紋を糸で刺繍して入れる技法です。色抜き紋や摺り込み紋より略式とされ、セミフォーマルなシーンで用いられます。代表的な縫い方には「けし縫い」「すが縫い」「相良縫い」があります。また、縫い紋の糸の色は、着物の色と同系色の濃い色や薄い色、または金糸や銀糸などが使われます。
[縫い紋を使う主な着物]色無地・訪問着・付下げ・江戸小紋・合繊着物
[けし縫い]
最も一般的な縫い方です。日本刺繍の技法の一つで、細かく短い針目で布の表面を埋めるように縫う技法です。針目が芥子(けし)の実のように見えることからこの名前が付けられました。
[すが縫い]
すが縫いは、日本刺繍の技法の一つで、絓糸(すがいと)と呼ばれる、光沢感のある細く撚った絹糸を用いて、紋を縫い表します。紋の陰影がハッキリと出るのが特徴です。
[相良縫い]
相良縫いは、生地の裏側から糸を引き出し、表で結び玉を作ります。この結び玉を連続させることで模様を形成する、重厚感のある縫い方です。玉にして結んでいく作業が縁を結ぶものと考えられ、縁起のいいものとして愛されています。