収納・保管のポイント 収納・保管のポイント

きものの「保管・収納」のポイント

きものはどのように保管すればよいのか、という基本的なお悩みから、
シミができてしまったり、カビが生えてしまったりした、というご相談まで、
きものの保管・収納についてよくお問い合わせいただきます。
デリケートな素材も多いきものですが、正しく保管することで長くきれいにお召しいただくことができます。
今回は、きものをお召しいただいたあとのお手入れから、保管・収納するまでのポイントをまとめていきます。

Index

01

保管・収納のポイント

きものを着たあとのお手入れ

きものを干す
Step1.きものを干す
きものをたたむ
Step2.きものをたたむ
たとう紙につつむ
Step3.たとう紙につつむ
収納して保管する
Step4.収納して保管する

Step1.きものを干す

step1 きものを干す

 きものを着たあと、一見きれいに見えても実はほこりや汚れがついていることが多いです。また、着用後は、自分で思っているより汗をかいて湿気を含んでいるものです。そのままにしているとシミやカビの原因になるので、しっかりと干して風を通し、湿気を飛ばしましょう。

■ 汚れがないか全体をチェック

袖口・裾・衿や胸元は特に汚れやすいので確認しておきましょう。

<チェックポイント>

  • □ 袖口の汚れ(皮脂汚れなど)
  • □ 裾の汚れ(泥はねなど)
  • □ 衿の汚れ(ファンデーションの汚れなど)
  • □ 胸元の汚れ(食べこぼしなどによる汚れ)
汚れの確認のポイント

■ 汚れがあったら…

汚れが定着する前に、「早く・正しく」応急処置をすることが大切です。
何の汚れかによって処置の方法が変わってきますので注意しましょう。

シミの種類
汚れ別 シミの落とし方
  • ● 口紅など化粧品、マジックなど油性の汚れ

    表面の汚れは広げないように、やさしく拭き取る。白いガーゼにたっぷりとリグロインか良質のベンジン をつけ、汚れをたたくように落とします。

    口紅など化粧品、マジックなど油性の汚れ
  • ● 醤油・コーヒー・お茶など水性の汚れ

    すぐに水か、薄めた中性洗剤で濡らし、白い綿ガーゼ、又は歯ブラシなどで、たたくように落とします。

  • ● ビールなどアルコールの汚れ

    すぐに水か、薄めた中性洗剤で濡らし、白い綿ガーゼ、又は歯ブラシなどで、たたくように落とします。

  • ● 血液の汚れ

    すぐに水か、薄めた中性洗剤で濡らし、白い綿ガーゼ、又は歯ブラシなどで、たたくように落とします。熱いお湯を使用すると血液が固まって落ちなくなるため、ぬるま湯か水で洗いましょう。

  • ● 泥の汚れ

    そのまま完全に乾かし、乾いたらブラシで払い落とす。乾く前にこすらないように、注意しましょう。

  • <Point>こすらない

    こすらずトントンとたたくように汚れを落とすのがコツです。こするとシミが繊維の中に入ってしまい傷む原因になので、こすらずにたたき落としましょう。

    こすらず叩くのがポイント

    ご自宅での処理が難しい場合、なるべく早めに専門店にクリーニングを依頼しましょう。

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■ 汚れがない場合は、しっかりと風を通して汗や湿気をとりましょう。

 半日~一日、直射日光の当たらない風通しの良い部屋にかけて陰干しし、湿気をとります。帯や着付小物、コーディネート品も同じようにハンガーにかけて陰干しします。干し終えてもきものに強いシワがあったら、汗が残っている可能性が高いです。

 そのままにしておくと時間の経過と共に成分が変化し「黄変ジミ」となってしまうため、専門店での「汗取り」をおすすめします。

風を通して汗や湿気をとりましょう

Step2.きものを畳む

step2 きものを畳む

 湿気がとれたら、畳んで仕舞います。
きものの畳み方にも種類がありますが、定番の「本畳み」をご紹介します。

きものの畳み方

きものの畳み方動画

Step3.たとう紙につつむ

step3 たとう紙につつむ

 きものを畳んだら、きれいな状態が崩れないようにキープしたまま「たとう紙」につつみましょう。
たとう紙は、きものを収納するための専用の包み紙。
通気性が良く湿気を吸ってくれる効果があり、ほこりや汚れが付くことを防ぎます。

 たとう紙以外の薄紙等は外しましょう

きものを購入したり、クリーニングに出したりしたときに薄紙や段ボールが入っていることがあります。
こちらはきものの劣化やシミ、カビの原因になりますので、長期保管の前に取り除きましょう。

 たとう紙は定期的に交換しましょう

前述の通り、たとう紙はきものの代わりに湿気を吸ってくれる効果があります。
長年使用したたとう紙は、長年の湿気を吸収し吸水性が落ちてきてしまうため、定期的な交換をおすすめします。たとう紙が変色したり、シミのような汚れがついていたら交換の目安です。

Step4.収納して保管する

step4 収納して保管する

たとう紙につつんだら、タンスや衣装ケースで保管します。
時代の変化とともに保管方法も多様化していますが、必ず守っていただきたいのは
「保管前にお手入れをして、湿気を避けて定期的な換気をする」こと。
保管前にしっかりとお手入れをしたうえで定期的な換気・確認をすれば、収納方法はある程度自由で大丈夫です。

■ きものの保管方法

  • ● 桐たんすで保管する

    昔からきものの保管には「桐たんす」が最適といわれています。和服用に作られていることが多く、たとう紙に入れた着物を平らな状態できれいに収納することができます。桐には、湿気によるカビからきものを守ってくれる「調湿効果」と、繊維を食べる虫を引き寄せない「防虫効果」や予防効果があります。たんすの上段は湿気がたまりにくいので、留袖や振袖など着用機会の少ないものや大切にしたいものを優先的に保管するとよいでしょう。

  • ● 洋ダンスで保管する

    洋ダンスはきものとサイズが合わない可能性があります。しわにならないようタンスの幅に合わせたサイズできものを畳みましょう。桐たんすと同じように、着る機会が少ないものや、大切にしたいものは優先的に上段に保管し、湿気の影響を避けることがポイントです。

  • ● プラスチックの収納ケースで保管する

    お手頃価格で販売されている「プラスチックの保管ケース」できものを保管する方も増えています。プラスチックケースには桐たんすのような調湿機能はありませんので、除湿シートを使用し、こまめな換気をしてください。ホコリがたまりやすいものもあるので、換気もかねて定期的に中身を出してケースの底を掃除するのをおすすめします。

上記以外にも、スチールラックに重ねて収納したり、畳んでカラーボックスに保管したり、たとう紙に入れたりいれなかったり、収納方法は人それぞれ。きものを着る頻度や持っている枚数、住居のスペースなど、自分に合った方法で保管しましょう。

02

保管・収納のポイント

保管時のポイント

Point1.湿気を避ける

・たとう紙以外の紙類は一緒に保管しない

・長期間着ない着物が入っている引き出しは、時々開けて換気する

・除湿剤を入れ、定期的に交換する

● 除湿剤・乾燥剤の注意点

・水が貯まるタイプの除湿剤は避ける
倒して水がこぼれた場合、脱色や変色の原因となります。

・定期的に交換する
市販のものは製品の案内に従って交換が必要です。水分が溜まったまま放置すると、カビ発生の原因になります。おすすめは水のたまらないシート状のものや、乾燥させて繰り返し使えるもの。

Point2.虫を避ける

・密閉性の高い保管方法を選ぶ

・ウールのきもの、洋服と一緒にしまわない
虫はウールを好むので、ウールに寄ってきた虫が他のきものを食べてしまう可能性があります。
きものに限らず、洋服や小物のウール素材のものも、きものや帯の近くに保管するのはやめましょう。

● 防虫剤の注意点

正絹素材や洗える素材などは虫は好まないため、ウール以外のきものには基本的に防虫剤はあまり入れなくても大丈夫です。万が一を考えて予防のために防虫剤を使う場合、下記ポイントにお気を付けください。

・違う種類の防虫剤等を混ぜて使わないように注意
種類の違う防虫剤を同時に使用すると化学反応によりガスが発生することがあります。
このガスは生地を傷めたり、変色を招いたりする原因となります。

・きもの・帯に触れないよう収納容器のスミに入れ、たとう紙の中には入れないようにしてください。

Point3.劣化やヤケを防ぐ

  • ● ゴムやプラスチックを使った小物は分けて保管

    ゴムやプラスチックは経年で劣化します。また、防虫剤等の化学反応が起きてしまうことも。
    きものが痛む原因になるので、小物は小物で分けて保管するようにしましょう。

  • ● 帯はきものの下に置きましょう

    箔のあるきものの上に帯などを重ねて積むと、重みできものの風合いを損ねる場合があるので、きものと帯を一緒に収納する際は帯をきものの下に置きましょう。

  • ● 吊るしたままにしない

    形崩れや色あせ・ヤケにつながります。特に裏地付きの袷や胴抜き仕立ては表地と裏地がずれてしまいやすいので要注意。長時間干したり、1日以上吊るしたままにしないよう、湿気を取ったらなるべく早めに畳みましょう。

  • ● 陰干し

    着用後は必ず日陰で干し、日陰や蛍光灯だけの場所でも長く出しっぱなしにしないようにしましょう。

  • ● 保管場所は直射日光が当たらない場所に

    直射日光の当たる場所を保管場所にしないようにしましょう。

Point4.虫干しをする

長期間保管しているきものは定期的に「虫干し」をしましょう。

■ 虫干しのポイント

  • 虫干しに最適な時期は?
    ● 虫干しに最適な時期は?

    元々、虫干しとは、夏の時期に付いた虫のタマゴがかえるころ、虫を落とす為に10月~11月に行うものを虫干しと呼びました。
    現在では、
    ・7月~8月
    ・10月~11月
    ・1月~2月
    の年3回が適していると言われています。
    その中でも、年間を通して最も湿度の低い時期に行う寒干しは、効果の高いお手入れ方法といえます。

  • 虫干しに最適な天気は?
    ● 虫干しに最適な天気は?

    晴天が 2日以上続いた天気の良い日を選んで下さい。
    その日が晴天でも、前日が雨だと、地面から湿気が上がってくるので、2~3 日待つようにします。
    時間は午前10時ごろから午後2時頃までの間が良いでしょう。

  • 虫干しに最適な場所は?
    ● 虫干しに最適な場所は?

    場所は陽の当たらない、風通しの良い部屋で行いましょう。但し、窓際は厳禁。
    ※常温での虫干しが基本です。ファンヒーター等による加湿は、却って逆効果になってしまいます。
    ※たとう紙や風呂敷などは日光に当てて、乾燥させておくと良いでしょう。

お手入れを怠ると…

ケーススタディ

Case01/カビ・シミ[正絹素材 羽織]
カビ・シミ 正絹素材 羽織

白い部分は柄ではなくカビ。全体的にカビができてしまった例。シミも多くみられます。保管中湿気がうまく避けられていないと、このように全体的なカビが出てしまいます。

Case02/シミ[正絹素材 羽織]
シミ 正絹素材 羽織

座る際に手を置いた位置に大きなシミ。手汗が経年でシミになってしまったものと考えられます。汗は目に見えないので、久しぶりに着ようと思って出したら気づかないうちにシミになってしまっていた、ということがよくあります。

Case03/シミ[ポリエステル素材 きもの]
シミ ポリエステル素材 きもの

帯を巻く位置にシミ。帯周りは特に汗をかきやすい部分です。洗える素材でも着用後のお手入れをしないとシミができてしまうことがあります。

Case04/シミ[ポリエステル素材 きもの]
シミ ポリエステル 着物

胸付近の裏地にシミ。補正をすることも多いので、胸付近も汗シミができやすいです。表には見えなくても裏地はシミだらけ、ということも…。

酷い状態になると、専門店でも元に戻せません。
しっかりと予防をしつつ、シミやカビ、その他、気になるところを見つけたら
早めに専門店に相談をしましょう。

京洗い

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きものクリーニング専門の職人による確かな仕上げをリーズナブルな価格でご提供。ぜひご利用ください。

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03

保管・収納のポイント

小物や草履のお手入れ

Chapter1.帯揚のお手入れ方法

きつく縛ったり、折り畳んだり、汗を吸ったり。
使用後の帯揚げは、かなり強い折りジワが付いてしまいます。

帯揚のお手入れ方法

■ お手入れの手順

01|まずは、汗を飛ばしましょう

帯揚は、汗を吸っています。ハンガー等を使って干し、汗を飛ばしてください。そのまま仕舞うと変色やカビの原因となりますのでご注意ください。

02|アイロンを掛けシワを伸ばします

当て布をしてから、軽くアイロンを掛けましょう。絹素材の場合、スチームアイロンは絶対厳禁です。(蒸気で絹が縮んでしまう可能性があります)

03|畳んで仕舞います

あまり小さく畳んで仕舞うと折りジワの元となりますのでご注意ください。

アイロン掛け

Chapter2.ボサボサになった帯締めの房を綺麗にする方法

何度も使用した帯締めの房が乱れてしまうことがありますよね。
気になる場合はお手入れしましょう。

帯締めの房

■ お手入れの手順

01|房部分に、蒸気をあてます

まず、房の部分の少し上を持って、房が下がるようにします。そこにやかんの蒸気だけを房に当てます。(房以外の部分に蒸気を当てると、縮みの原因になりますので、気を付けてください。)蒸気をなでるように当て、手(或はクシ)で房を整えるという動作を繰り返して下さい。蒸気は高温の為、取り扱いには充分注意して下さい。

房部分に、蒸気をあてます
02|乾いたら和紙(ティッシュ)で巻いてテープで止めます

房が整いましたら、しばらく干して湿気を飛ばします。きれいになったからといって、湿気が残ったままの状態でしまうとカビの原因に繋がります。乾いたところで、房を和紙(或いはティッシュ)で巻いてテープで止めて出来上がりです。頻繁に使う場合は、ポストイットで巻くという手もあります。

テープ止め

Chapter3.草履のお手入れ・保管

予定があって久しぶりに出したら履けなくなっていた…ということがありがちな草履。お手入れをしてから保管することで、劣化を防ぎましょう。

■ お手入れのポイント

● 履いた後は、風通しのよい場所で陰干します

汚れや湿気を放置しておくと、カビの原因になりますので、注意しましょう。

● 雨の日に使用した場合は…

雨の日に使用した場合は、後日天気の良い日に裏面を上にして干し、よく乾かしてから乾いた布で全体を拭いて汚れを落とします。汚れが落ちない場合は固く絞った濡れ雑巾で拭きますが、草履は湿気に弱いので、濡れた雑巾を使う場合にはしっかりと絞って拭くよう気を付けましょう。

● 湿気を避けて保管します

よく使う草履であれば頻繁に出し入れしますので、購入時についてくる箱に入れて保管し、通気性のよいところにおいておけばよいでしょう。礼装用など使用頻度が低いものは、不織布やメッシュ素材の通気性が良い専用ケース等でほこりを防ぎながら保管をするのがおすすめです。