上質な夏の装い
麻の着物特集

Feat.
Omi chidimi/Ojiya chidimi
近江ちぢみ&小千谷縮

麻の着物

暑い夏を快適に過ごす麻の夏着物

通気性と吸湿性に優れ、さらりとした肌触りが特徴の天然素材「麻」

 夏を涼やかな麻の着物で楽しむ喜び。その季節の移ろいを、その時期に合わせた着物で愛でるのは最高の贅と言えるでしょう。ほんのり透け感のある生地は、涼し気な雰囲気で、見る人の目に涼を与えてくれます。そんな夏着物の中でも、吸水性と放熱性に優れた「麻」素材の着物は、その「ひんやり」「さらり」とした感触から夏の素材として重宝されており、普段から着物をお召しになる着物ユーザーはもちろん、着物ビギナーにも人気のアイテムです。麻の着物は、日本各地のさんちでつくられており、それぞれに特色がありますが、こちらの特集ページでは、その中でも特に人気の「近江ちぢみ」と「小千谷縮」をフィーチャーしてその魅力をお届けいたします。

麻の着物 スタイル1 麻の着物 スタイル2 麻の着物 スタイル3 麻の着物 スタイル4 麻の着物 スタイル5 麻の着物 スタイル6

上質な夏の装い 麻の着物特集
麻の着物とは?
その特徴と魅力

麻の着物の魅力

麻の着物の特徴
− メリットとデメリットを解説

麻の着物の主なメリット

  • 通気性が抜群で涼しい着心地
  • シャリ感がありサラリとしている
  • 速乾性に優れベタつなかい
  • 汗をかいても乾くのが早い
  • 軽いので着ていて楽
  • 絹に比べてお手入れが楽
  • 様々な着こなしができる
  • シンプルで飽きない色柄
  • さんち・つくり手が感じられる
麻のきもの 特徴

涼しくサラッとした着心地。その清涼感は周りからも涼やかで上品な印象を与えます。

 麻の着物は、夏の着物の代表格で、最大の特徴は「涼しく、サラッとした着心地」がまず挙げられます。天然繊維である「麻」は、通気性と吸湿・速乾性に優れ、高温多湿にも強いため、湿気が多く暑い日本の夏には最適な素材です。汗をかきやすい夏には、汗をすばやく吸い取り、表面から発散してくれる麻素材の特性は大変適しており、夏着物なら麻の着物を!という方が多いのもこうした特徴によるものでしょう。また、麻素材は洗濯で汚れが落ちやすいため、清潔さが求められる肌着、ハンカチ、テーブルクロス、シーツなどにも用いられることが多いです。尚、天然繊維なので、どうしても若干の収縮が起きる場合がありますが、ご自宅で水洗いできるなど、絹の着物に比べお手入れしやすいのも嬉しいポイントです。
 また、麻の着物は、縞や格子・無地感といったシンプルな色柄のアイテムが多く、帯合わせやコーディネート小物合わせも自由自在。その時々で様々な表情を演出でき、年齢問わず長くお召しいただけます。

天然素材の「麻」にもいろいろな種類がある!?

 麻には、リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ヘンプ(大麻)、ジュート(黄麻)、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻(ヘネケン)など、様々な種類がありますが、共通した特徴としては、「快適な清涼感」=通気性が良く、繊維に空洞があるため吸水・発散性に優れ、汗をかいてもベタつかない、が第一に挙げられます。日本では「リネン(亜麻)」と「ラミー(苧麻)」の2種類のみが家庭用品品質表示法で「麻」と表記することを認められています。
 麻の着物の多くは「ラミー(苧麻)」を用いています。ラミーは、多年生の植物で高温多湿を好みます。寒さに弱く霜が降りると枯れることがありますが、翌春には新しい芽が出てきます。天然繊維の中でも「強く、ハリ、コシがある」のが特徴で、色が白く絹のような光沢があります。一方で、ラミー糸は毛羽立ちが多く、絡まりやすくて切れやすいといった性質もあるため、織る際には、予め糊付け加工をして織り上げます。
 また、今現在では、日本国内ではほとんど苧麻の栽培はされておらず、中国の湖南省や四川省、江西省など、長江流域の温暖湿潤な地域をはじめ、ブラジル、フィリピン、インドネシア等で栽培されています。特に、湖南省は中国の苧麻生産の約60%を占める最大のさんちであり、「世界のラミーの都」とも称されています。尚、中国国内でも経済成長と共に麻の生産に従事する方も減少しており、課題を抱えています。
 また、リネンの原料はフラックスという植物で、フランスのノルマンディ地方や、ベルギー、オランダなどヨーロッパを中心に栽培され、紡績は主に中国で行われています。寒冷の土地でしか生育せず、日本では札幌以北で育てることができます。リネンはソフトでしなやかな風合いで、ラミーに比べると毛羽立ちが少ないのが特徴です。そのため、キッチン、バス、ベッドまわりの衛生用品に用いられることが多いです。

麻の着物の主なデメリットと
ワンポイントアドバイス

シワがつきやすい

Point|シワの取り方…霧吹きで水をかけ、手で叩いてシワを伸ばしましょう

 麻の着物のデメリットとしては、シワがつきやすいということがまず挙げられます。お召しになった後はハンガーにかけた状態で霧吹きをつかってシワの目立つ箇所に水をかけましょう。水温はお湯ではなく水を使用するようにしましょう。一般的には、おはしょり含むお腹周り、袖口、長時間座っていた場合は膝裏などがシワがつきやすい箇所です。シワの箇所に霧吹きで水をかけたら、表側と裏側から手で拍手をするようにパンパンと叩いてシワを伸ばしていきましょう。なお、濃地の着物などは色落ちの恐れもあるので、霧吹きで水をかけるまえに、下前身頃などに一度、霧吹きして色落ちするかどうか確かめておくと安心です。
 なお、アイロンはシボのある麻着物などは風合いを損ねてしまうことがあるため、避けましょう。どうしても気になる場合には、アイロンを浮かせてスチームだけを当てるか、当て布をして中温で軽く押さえる程度に留めましょう。

シワの取り方

透け感が気になる場合は…

Point|麻の着物に合わせたサイズの長襦袢や、着丈が長めのインナーがあると安心です。居敷当もおすすめです。

 麻の着物は透けるため、腕やふくらはぎが透けて見えてしまう場合もあります。透け感は部屋の光と太陽光でも若干異なるので、部屋でチェックした時は大丈夫でも、外に出て強い陽射しを浴びた時、「思ったよりも透けてる…」といったこともあります。透け感が気になる場合は、麻の着物にはサイズの合った(袖丈や裄丈・身丈など)長襦袢を着るのがオススメです。また、前からは布が二枚重なっているため透けていないように見えても、後ろ側が透けていることがあります。麻の着物を着たら、鏡で後姿も確認すると良いでしょう。尚、二部式襦袢派の方は、下は足首くらいの長さになるように巻き、上の襦袢の裾は透けてしまうのを防ぐため、 帯のたれ先で隠れるくらいの長さのものを選ぶと安心です。また、長襦袢を着ないで「浴衣」ライクにお召しになる着こなしも人気ですが、その場合は、着丈が長めのインナーがあると安心です。(肌着 快 透けても安心なロング丈 S/M/L)

 また、透けが気になる場合は、仕立の際に「居敷当(いしきあて)」という、補強+透け防止のための部分的な裏地をつけるのもひとつの手です。ただし、色味のある夏の長襦袢で透け感・襲ねの色を楽しみたい場合などは、あえて居敷当はつけず、透け感を楽しむのもおすすめです。

居敷当

多少の収縮が起きる

Point|ほんの気持ち長めに仕立てておくのも良いでしょう。

 麻は天然繊維のため、どうしても若干の収縮はおきますが、例えば近江ちぢみの場合、竿干しをはじめとしたさんちでの最終加工により、洗濯時の収縮率は平均約1%〜1.5%、最大でも約3%程度に留められています。とはいえ、縮みを気にされる方は、新たにお仕立てする際に、実際の寸法より1分(約3.8mm)ほど長めに仕立てておくのもひとつの手です。

麻のきもの 生地

麻の着物の種類と主なさんち

麻の着物には、大きく分けて「縮(ちぢみ)」と「上布(じょうふ)」の2種類あります。

縮(ちぢみ)

 縮(ちぢみ)は、撚りをかけた糸を用い、表面に「シボ」と呼ばれる凹凸を出した着物で、その凹凸により肌との接地面が少なく、肌離れの良さと高い通気性を生み涼しい着物として人気があります。この凹凸の「シボ」はさんちによってその技法が異なり、特色ともなっています。

<主なさんち>
・近江ちぢみ|滋賀県 近江(湖東地域)・小千谷縮|新潟県 小千谷市・明石縮|新潟県 十日町市

縮のさんち
近江ちぢみ
近江ちぢみ
小千谷縮
小千谷縮
明石縮
明石縮

上布(じょうふ)

 上布は、細い麻糸を平織りした、涼しくシャリ感のある夏の着物です。縮と異なり「シボ」が少ないのが特徴です。一説では、上納される高級な麻の布であったことから上布と呼ばれるようになったとも言われています。現在では生産数も少なく、なかなか見ることのできないものとなっています。

<主なさんち>
・近江上布|滋賀県 近江(湖東地域)・越後上布|新潟県 魚沼地域・宮古上布|沖縄県 宮古島・八重山上布|沖縄県 八重山諸島

上布のさんち
麻の着物

麻の着物を着る時期と場所は?

盛夏のみならず気温が高いな!という日には、快適な麻の着物がおすすめです。

 麻の着物を準備して、いざ着よう!と思ったときにふと心配になるのが、着物の「着て良い時期」。冬には袷(裏地のあるきもの)を着て、夏は単衣(裏地のないきもの)…ということはなんとなく知っているけれど、「じゃあ麻の着物はいつからいつまで?」「単衣の着物と麻の着物は着て良い季節が違うの?」といった点は、意外に悩んでしまうところです。
 麻の着物をはじめ、夏着物を着る時期は、基本7月・8月の盛夏。ただし、近年、温暖化も進み「気温に応じて前後して良い」という点を押さえておけば大丈夫。特にカジュアルきものに関しては、体調と気温に合わせて、6月や9月の暑い日などは、夏の着物でお出かけしても問題ありません。

フォーマルな席には向きませんが、カジュアルシーンで特別な気分を味わいたいなら◎

 水族館や美術館へ、ホテルでランチ…など、「ゆかたではちょっと行きにくいかも…」という場所に着て行くと、洋服では味わえない楽しさや優雅さが味わえるので、とてもオススメです。例えば店員の方に褒めてもらえたり、写真を撮るのも洋服の時より新鮮さがあって楽しくなったり、また、施設によっては浴衣や着物を着ていると施設料の割引やドリンクサービスなどの特典がある場所も。着るだけで楽しい、そして着ているだけで見知らぬ人にも褒めてもらえる、というのは、洋服ではなかなか出来ない体験です。

古都散策

古都散策

お食事会

お食事会

美術館めぐり

美術館めぐり

観劇・コンサート

観劇・コンサート

お気に入りのカフェ

お気に入りのカフェ

ショッピング

ショッピング

夏祭り

夏祭り

花火大会

花火大会

KIMONO STYLING
麻の着物コーディネート術

麻の着物コーディネート術

合わせる帯や小物でガラリと印象が変わる自由自在な着回し術

上質な“着物スタイル”から
ラフで気軽な“浴衣スタイル”まで

 麻の着物は、長襦袢を着ずに半幅帯を合わせて、素足に下駄といったラフで気軽な“浴衣スタイル”も出来れば、長襦袢を着て夏の名古屋帯に帯締め・帯揚げを合わせ、足袋&夏草履を履いてといった、ちょっとよそゆきな“おめかし着物スタイル”まで様々な装いを楽しむことができます。お出かけするシーンに合わせた装いを楽しみましょう。
 TPOに合わせたスタイルの判断基準としては、洋装をイメージすると良いでしょう。裸足にサンダルを合わせて行ける場所なら、シンプルな“ゆかたスタイル”でも良いですし、ホテルのレストランや、美術館など、裸足やTシャツでは行けないようなちょっとよそゆきな場所でしたら、長襦袢を着て名古屋帯、足袋に夏草履といった“着物スタイル”といったように置き換えて考えるとわかりやすいです。

ちょっとよそゆきな「おめかし着物スタイル」

ちょっとよそゆきな“おめかし着物スタイル”

[コーディネートアイテム]
麻のきものに「長襦袢」。「夏の名古屋帯」に涼やかな帯留&三分紐、絽の帯揚げをアクセントに。足元は清涼感のある白の麻足袋&夏草履を合わせて。

ラフで気軽な「浴衣スタイル」

ラフで気軽な“浴衣スタイル”

[コーディネートアイテム]
長襦袢は着用せず、麻の着物に「半幅帯」を合わせて。足元も足袋を履かずに素足に下駄を合わせた、シンプルな浴衣ライクな装いで気軽に。

同じ着物でも、帯合わせでこれだけ印象が変わるスタイリング例

麻の着物×博多紗献上帯
麻の着物×博多紗献上帯
麻の着物×夏帯
麻の着物×夏帯
麻の着物×ミンサー帯
麻の着物×ミンサー帯
麻の着物×兵児帯
麻の着物×兵児帯

麻の着物と帯 “色合わせ”のヒント

同系色と反対色の帯合わせが与える印象は?

 麻の着物の多くは、「チェック(格子柄)」「ストライプ(縞柄)」「無地感」といったシンプルな柄が用いられており、コーディネートの幅が広いため、毎回、いろいろな装いを楽しむことが出来、飽きがきません。そのため、年代を問わずお召しいただけることも嬉しいポイントです。
 例えば、濃地の麻の着物に明るい色の帯を合わせると、メリハリの効いた華やかな印象になります。勿論、濃地きもの+濃い地帯の同系色コーディネートもOK。シックで粋なスタイルになります。その場合は帯揚や帯締めに明るめの色を取り入れると、重くなりすぎず、バランスが取れたコーディネートに。一方、淡い色合いの麻のきものに、同じような白系の柔らかい色の帯を合わせれば、より洗練された上品な印象に。淡い地色の麻の着物に濃い地色の帯を合わせれば、キリッとメリハリのあるカッコ良い装いになります。麻の着物自体がシンプルなデザインが多いからこそ、帯合わせで自分らしい装いを色々と試してみませんか?

同系色の組み合わせ

濃地の着物に濃地の帯を合わせたワントーンコーデ
濃×濃

濃地の着物に濃地の帯を合わせたワントーンコーデは都会的で洗練されたクールな印象

淡地の着物に淡地の帯を合わせたコーデ
淡×淡

淡地の着物に淡地の帯を合わせたコーデは女性らしさ際立つ上品で柔らかな装い

反対色の組み合わせ

濃地の着物に淡い帯を合わせたコーデ
濃×淡

着物と帯の合わせが反対色ならば着物と帯がそれぞれ際立ち、メリハリのある華やかな印象を与えます

淡いの着物に濃地の帯を合わせたコーデ
淡×濃

淡地の着物に濃地の帯合わせはモダンな印象を与えます。見た目の引き締め効果も◎

近江ちぢみ&小千谷縮

さんち|滋賀県 近江(湖東地域)
「近江ちぢみ」とは?

近江ちぢみとは

近江ちぢみとは

伝統技法が生む、涼やかな麻素材の夏きもの

 近江ちぢみは、滋賀県湖東地域(近江)に伝わる、日本を代表する麻織物のひとつで、天然素材ならではの味わいが魅力です。縮独特のシボと呼ばれる凹凸は、肌離れの良さと高い通気性を生み、蒸し暑い日本の夏を快適に過ごせる夏きものです。

さんち|滋賀県 湖東地域

琵琶湖の豊かな水に恵まれ交通の要所に位置する近江さんち

 日本最大の湖「琵琶湖」は、滋賀県の面積の1/6を占めており、その東岸にある湖東地域(東近江市、愛知郡愛荘町、犬上郡多賀町、近江八幡市、彦根市など)で近江ちぢみはつくられています。琵琶湖の湖面からの湿潤な空気と、鈴鹿山系から流れる愛知川の美しい水による多湿な内陸性の気候は、乾燥すると切れやすい麻の製織・加工に適しており、湖東地域は麻織物のさんちとして大きく発展してきました。
 また、近江の麻織物が全国に広まった背景には、交通の要所であった地理的条件も挙げられます。近江には、江戸と京都を結ぶ街道「中山道」が通っており、織物の運搬や、「三方よし」で知られる近江商人の往来に重要な役割を果たしました。

滋賀県 湖東地域

近江ちぢみの特徴的な製作工程

 近江ちぢみと小千谷縮、同じ麻の着物として大変人気がありますが、その人気の秘密である「サラリとした風合い」を生む「シボ(凹凸)」のつくり方に大きな違いがあります。この「シボ」をつくるため、小千谷さんちでは「湯もみ・棒絞り」という工程を行うのに対し、近江さんちでは主に「もみ・竿干し」と呼ばれる加工を行います。
 また麻の着物の製作工程に欠かせないのは、徹底した「湿度管理」。近江ちぢみで使用するラミー糸(苧麻)は、糊付けしていても多少の毛羽が立っていて、乾燥すると切れやすい特性があるため、糸を扱う工場では、徹底された湿度管理の下、各工程が行われます。さらに、後工程で生地が縮むことを想定し、仕上がり寸法から逆算した密度で織り上げることも、近江ちぢみ独自の風合いの良さにつながっています。

匠の技|毛焼き

生地表面の毛羽を取り除くことで、
滑らかな手触りに。

生地表面の毛羽を取り除くことで、滑らかな手触りに。

 近江ちぢみで用いる「ラミー糸」は、毛羽が立っているため、織り上がったら生地を「毛焼き機」に通し、布表面の毛羽をガスバーナーで両面焼いて、取り除きます。毛羽の状態によっては、複数回、生地を毛焼き機に通す場合もあります。これにより、麻特有のざらつきや、糸から出ている不要な毛羽が取り除かれ、手触りが滑らかになるとともに、生地の光沢が増し、シャリ感が引き立ちます。

毛焼き

匠の技|もみ(シボ加工)

近江ちぢみ独自の風合いを生む
「もみ(シボ加工)」

近江ちぢみ独自の風合いを生む「もみ(シボ加工)」

 生地が肌にべとつかず、通気性が高まり、サラリとした肌触りが魅力の近江ちぢみの風合いは、この「シボ加工」によって生まれます。近江ちぢみの場合は、毛焼きが完了した生地を一度洗い、半濡らしの状態で生地をロープ状にし、洗濯板のような凹凸のある板(シボ取り板)の上で手揉みし、職人の感覚でシボを形成していく手法が伝統的に知られていますが、近年では、この加工は機械化も進んで来ており、効率化が図られています。このシボができる基本的な原理は、緯糸に強撚糸を使用していることと、織り上がった生地を揉みほぐすことで、強撚糸が元の状態に戻ろうとする力が働き、生地が縮んで凹凸が生まれるといった特性にあります。

もみ(シボ加工)

匠の技|竿干し

ゆっくり乾燥させることで収縮率が安定します

ゆっくり乾燥させることで収縮率が安定します

 水洗いした生地を脱水機で絞り、竹竿が並んでいる乾燥室に一反づつ干します。干した後で、蒸気を乾燥室に入れ、室温を約45℃にしてファンで風を送りながら一晩かけてゆっくりと乾燥させます。自然乾燥なので、生地が縦横に無理なく縮まります。この時にシワがしっかりと固着され、洗濯時の収縮率の安定性が向上します。
 近江ちぢみは全て天然素材であるからこそ、合繊素材とは異なり縮むことはありますが、この竿干しをはじめとした最終加工で、洗濯時の収縮率は平均約1%〜1.5%、最大でも約3%程度に留められていますので、安心してお召しいただけ、ご着用後もご自宅で洗っていただけます。

竿干し
さんち大辞典 近江ちぢみ

さんち|新潟県 小千谷市
「小千谷縮」とは?

小千谷縮とは

小千谷縮とは

シボによる肌馴染みのよい夏着物の定番アイテム

 小千谷縮は、江戸時代後期、播州明石から来た堀次郎将俊が、それまでの越後麻布に改良を加え完成されたと言われています。「シボ」のある独特の風合いで高い評価を得、その技法を活かして織りはじめたという小千谷縮は、昭和50年(1975年)に伝統的工芸品に指定されました。小千谷縮の着心地の良さを生み出す最大の秘密は「シボ=凸凹」。シボがあることで、肌との接地面が少なくなり、より涼しさを生み出します。この「シボ」を立たせるために、「湯もみ」と「棒絞り」という技法が用いられますが、その技術保持者は極めて少なく、後継者不足が問題となっています。

さんち|新潟県小千谷市

麻の生産に適した風土に育まれた小千谷縮

 新潟県のほぼ中央に位置し、雪とお蕎麦と錦鯉の町「小千谷」。麻織物は製作の過程で適切な湿気が必要となりますが、盆地という地形や、国内有数の豪雪地帯であり、日本一長い信濃川が流れているといった風土により適度な湿度に恵まれているため糸が扱いやすく、また、雪解け水が良質な軟水となり素晴らしい発色効果を上げるなど、織物に適した風土できものが作られています。

新潟県 小千谷市

小千谷縮の特徴的な製作工程

 小千谷縮の魅力である着心地のよさを生む「シボ」は、「湯もみ」と「棒絞り」という技法によって生み出されます。これが、近江ちぢみにはない、小千谷さんち独自の技法となっています。
 また小千谷縮には、国の厳しい基準を満たした伝統的工芸品から、現代の技術を応用した手に入れやすいものなど、その工程の違いによりランクが異なります。最も希少性の高いものは、重要無形文化財に指定されたもので、手績み(てうみ)の苧麻糸を使用し、地機(じばた)で織り、湯もみ、雪晒しをするなどの極めて伝統的な技法で制作されたものがそれにあたります。次に高級品とされるのは、国の伝統的工芸品に指定されたもの。いずれも大変高価で一般には手に入れにくいということより、伝統的な技法を柱としながら、製作工程の一部を機械化・効率化をすることで、より身近でお求めやすくしたものが、当社をはじめ一般的に多く流通している小千谷縮です。

匠の技|湯もみ

独自の「シボ」を生む工程

独自の「シボ」を生む工程

 小千谷縮は、緯糸に非常に強い撚りをかけた糸を使用しています。織り上がった反物を、熱めの風呂くらいの温度の湯に入れてもみあげることで、糸が元に戻ろうとして縮み、独特の「シボ(凹凸)」が生まれます。また湯もみをする前の反物は、糸が切れないように糊が付いているため、糊を落とすといった意味合いもあります。手で糊の落ち具合や、シボの出方を熟練のカンで確認しながら、仕上げていきます。

湯もみ

匠の技|棒絞り

縦方向の細かい「シボ」を定着させる仕上げ工程

縦方向の細かい「シボ」を定着させる仕上げ工程

 湯もみした反物を棒に巻きつけて、くるくると回転させて強くひっぱりながら水分を絞りだします。こうして縦方向に強力な撚りをかけることで、特有の縦方向の細かい「シボ」が定着していきます。絞る力加減次第で、生地の美しさが決まるため、大変繊細な熟練の手法が必要となります。

棒絞り

<まとめ>
近江ちぢみと小千谷縮の違い

さんちの違い

さんちは違えど、共通しているのは「麻に適した湿度」と「豊かな水」に恵まれていること

 近江さんち・小千谷さんち、滋賀県と新潟県で距離はかなり離れていますが、ともに湿潤な空気と美しい水が豊かにあるといった共通点があります。麻は乾燥に弱く切れやすいといった特徴があることから、両さんちが適度な湿度のある麻に適した風土であることがわかります。

近江さんち|滋賀県 湖東地域

琵琶湖の豊かな水に恵まれた近江さんち

 近江ちぢみは、日本最大の湖「琵琶湖」の隣に位置する滋賀県湖東地域(近江)でつくられています。琵琶湖の湖面からの湿潤な空気と、鈴鹿山系から流れる愛知川の美しい水による多湿な内陸性の気候は、乾燥すると切れやすい麻の製織・加工に適しており、湖東地域は麻織物のさんちとして大きく発展しました。

琵琶湖

小千谷さんち|新潟県 小千谷市

信濃川と雪深い自然が生んだ小千谷縮

 新潟県小千谷市にてつくられる小千谷縮は、国内有数の豪雪地帯であり、日本一長い河川である信濃川が流れています。きれいな水に恵まれた自然溢れる地域です。麻織物は乾燥に耐性がない為、作る過程で適当な湿気が欠かせません。小千谷市は雪が多く湿った空気が保たれている為、麻にとって最適な環境であり、その気候を生かして小千谷縮は発展してきました。

信濃川

糸の番手(ばんて)の違い

糸の太さの違いによる風合いの違いがあります。

 近江ちぢみも小千谷縮も、原料となる糸はともに「ラミー(苧麻/からむし)」を使用しています。ラミー糸は「強くてハリやコシがある」というのが特徴で、絹のような光沢があります。ただし、絡まりやすくて切れやすいという特性もあるため、織る際には、どちらの産地もあらかじめ糊付けをします。近江ちぢみと小千谷縮の違いの1つは「糸の番手(太さ)の違い」です。番手とは、糸の太さを表す単位で、『数字が小さい=太い糸=しっかりした風合い』、『数字が大きい=細い糸=繊細で軽い風合い』となっています。糸が太いほど生地にコシが出て、細いほど軽やかでしなやかといった風合いの違いが生まれます。

近江ちぢみ|80番手

 近江ちぢみに使われる麻糸は『80番手』です。
これは「やや細めだが、適度な強さとハリを持つ糸」です。
・しっかりした質感がありつつ・麻らしいシャリ感も感じられ・日常着としての耐久性も確保できるというバランスの良い糸の太さです。

近江ちぢみ 生地

小千谷縮|80番手と100番手

 小千谷縮に使われる麻糸は基本、経糸に80番手・緯糸に100番手が用いられます。100番手の糸は、80番手より更に細く、より繊細で軽やかな糸になります。
・触れたときの軽さ・肌に沿うような柔らかさ・透け感のある上品な風合いといった特徴が生まれ、より高級感のある仕上がりです。

小千谷縮 生地

シボ(凹凸)の出し方の違い

近江さんちと小千谷さんちでは、シボを出す工程に違いがあります

 近江ちぢみと小千谷縮、ともに風合いの要となる「シボ」。どちらも同じように熟練の手技により肌触りのよい「シボ」をつくりますが、その工程に違いがあります。

近江ちぢみ|もみ(しぼ加工)

 織り上がった反物を半濡らしの状態でロープ状にし、洗濯板のような凹凸のある板(シボ取り板)の上で手揉みしていきます。これにより強撚糸が元の状態に戻ろうとする力が働き、生地が縮んで凹凸が生まれます。

近江ちぢみ もみ(しぼ加工)

小千谷縮|湯もみ・棒絞り

 小千谷では、湯もみと棒絞りによりシボを作っています。湯に入れて手揉みすることで、緯糸の撚りが戻り縮みます。更に、棒で絞り上げることで、縦方法のシボが定着していきます。

小千谷縮 湯もみ・棒絞り

近江ちぢみ&小千谷縮
LINE UP

「近江ちぢみ」 商品ラインナップ

近江縮 ぼかし 碧のさざめき

近江縮 ぼかし 碧のさざめき

価格|79,200円(税込)
素材|麻100%

白で織りあげた近江縮に、いつか見た海の記憶を重ねるように、美しいグラデーションの染めを施しました。さらりとした近江縮の風合いに、さざめく波を思わせる色が重なり、涼やかな奥行きを生み出しています。たてのぼかしが、夏の着姿をすっきりと、清々しく見せます。

商品はこちら

近江縮 縞 胡桃

価格|70,400円(税込)
素材|麻100%

経糸を青と墨の細い縞で整経し、ヨコ糸で配色を変え織り上げています。見る角度や光の当たり方によって色の見え方が変わり、穏やかな色の移ろいが上品な印象を与えます。近江縮ならではの細かなシボが縞をよろけたように見せ、生地にさりげない表情を生み出しています。無地感覚でありながら味わいある、飽きのこない一枚です。

商品はこちら
近江縮 縞 胡桃

「小千谷縮」 商品ラインナップ

小千谷縮 トーンチェック 紺×緑

小千谷縮 トーンチェック 紺×緑

価格|88,000円(税込)
素材|麻100%

きものやまとオリジナルの配色で染めた麻糸で織り上げました。トーンチェックとは tone on tone(トーンオントーン)の略で「色調をいく重にも重ねる」という意味があります。紺・緑・濃紺が重なり合い、ワンピースのような感覚で楽しめます。

商品はこちら

小千谷縮 ギンガムストライプ 白黒

価格|96,800円(税込)
素材|麻100%

可愛らしいギンガムチェックの中に、1本の黒ラインを忍ばせました。衿元や袖口など、所々にアクセントとして現われます。モノトーンの細かな柄行きのため、可愛らしすぎず、大人の雰囲気が漂う一着です。

商品はこちら
小千谷縮 ギンガムストライプ 白黒

Pick Up Item
夏を快適に過ごす
お役立ちアイテム

暑い夏を乗り切るための必須アイテムとしておすすめのインナー&小物

ひんやりサポートインナー 保冷剤付き

暑い日でもあきらめない!見えないところでしっかり涼しく。

素材:ポリエステル100%

夏の暑さに負けず、快適にきものを楽しめるように考えたひんやりサポートインナー。生地は吸水速乾性に優れており、保冷剤を入れられるポケットが4つ付いている、機能性インナーです。衿元・脇と冷やすと涼しさを感じるポイント(衿元・脇)に保冷剤をセットして着用します。セットの保冷剤は、不凍(ジェル状)のため、きものやゆかたにも響きにくい仕様。オリジナルカラーとして、肌なじみのよいグレージュカラーです。

ひんやりサポートインナー
保冷剤付き

暑い日でもあきらめない!
見えないところでしっかり涼しく。

ひんやりサポートインナー 保冷剤付き

さらりステテコ

さらりと快適!インナーに忍ばせる一枚。

さらりステテコ

さらりステテコ

さらりと快適!インナーに忍ばせる一枚。

素材:綿100%

夏のきもの姿をより快適にするために考えた、さらりステテコ。きものやゆかたの下にこもりがちな熱や汗をさらりと受け止めてくれる、ステテコです。通気性と肌触りの良い綿素材で、汗をかいてもべたつきにくく、快適な履き心地です。ウエストはローライズで、きものに合わせた仕様。また、透け感を抑えられるよう、肌なじみのよいグレージュカラーにしているので、見えても肌着感がなく、安心な1枚です。

肌着 快 透けても安心なロング丈

吸水速乾素材で汗ばむ夏に最適!

本体 レーヨン62%・ポリエステル36%・ポリウレタン2%
首・袖廻り ナイロン88%・ポリウレタン12%

淡地の浴衣や夏着物を着るときの強い味方として登場!ワンピースタイプの機能性インナー。一枚で安心して着用できるロング丈で、吸水速乾性のある肌触りのよい生地がポイント。伸縮性もあり、体に心地よくフィットします。夏の暑さに負けず、安心・快適にゆかたを楽しめる、お守りのようなインナーです。

肌着 快 透けても安心なロング丈

吸水速乾素材で汗ばむ夏に最適!

肌着 快 透けても安心なロング丈

へちまの帯枕

天然素材のへちまは軽くて通気性が抜群!

へちまの帯枕

へちまの帯枕

天然素材のへちまは軽くて通気性が抜群!

素材:へちま100% ガーゼ 綿100%

スポンジ状になっている天然素材のへちまは軽くて通気性が抜群。熱や湿気がこもり、ムレやすい帯まわりのお悩みを軽減。夏に限らず、オールシーズン使用できます。背中に当たる部分は曲線にカーブしており、体にフィットしやすい形状。付け心地も軽やかで負担が少ない仕様です。夏のきものライフを快適に過ごすためのお役立ちアイテムです。

半透明前板 くらげ

見えても気にならない!どんな帯にもの馴染む半透明の前板

素材:ポリプロピレン100%

見えても安心、透明感のある前板です。夏帯を締めたときに、前板が透けて見えてしまう!というお困りを解消できる優れもの。安定感のある程よい厚みと、脇腹までサポートできる46cm仕様で、帯回りのシワを整えます。夏だけでなく、通年使用していただけます。

半透明前板 くらげ

見えても気にならない!
どんな帯にもの馴染む半透明の前板

半透明前板 くらげ

夏の快適素材「麻」の長襦袢&小物

夏・本麻長襦袢

価格:53,900円(税込/お仕立付)

素材:麻100%

オリジナルカラーの本麻(麻100%)長襦袢です。気持ちがうきうきするような、彩度を抑えたパステルカラーです。夏時期だけでなく通年でお召しいただきやすいよう、フラットな無地の生地を使用しました。

LINE UPを見る

夏・本麻長襦袢

夏・本麻長襦袢

Point|
ちらりと振りから見える色がアクセントに!

長襦袢 袖口

Point|ちらりと振りから見える色がアクセントに!

袖口からさりげない色味がのぞき、すずやかで軽やかな着こなしに。夏らしい抜け感が生まれて、こなれた大人の洒落感を演出できます。

麻無地半衿

価格:3,300円(税込)

素材:麻100%

さらりとしたナチュラルな風合いがポイント。透け感の強くない麻生地を使用していますので、夏はもちろん、1年通してご使用いただけます。お手入れしやすいのも嬉しいポイントです。

LINE UPを見る

麻無地半衿

麻無地半衿

しらゆき足袋 麻

しらゆき足袋 麻

しらゆき足袋 麻

価格:5,830円(税込)

表地:麻100%(オーガニックリネン),
裏地:テンセル100%(アウトラスト),
底地:綿100%(オーガニックコットン)

麻素材で夏らしさと涼しげな足元を演出できる白足袋です。快適さにも拘り、内側には暑い・寒いを「ちょうどいい」にする機能性素材、アウトラストを使用。アウトラストは、真夏の炎天下や、真冬の厳しい寒さの中でも肌の表面温度を31℃~33℃にコントロールしようとする機能があります。ベージュの底地は汚れが目立ちにくく、普段履きに最適です。

商品はこちら
麻の着物 麻の着物

この夏は、麻の着物で
ワンランク上の上質な装いを
愉しみませんか?

きものやまと