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ミンサー

Minsar

「ミンサー」とは

 「ミンサー」は、沖縄の伝統的な織物の一つで、東京から南西に約2100km、沖縄本島より約400kmに位置する大小19の島からなる八重山諸島を中心に作られており、沖縄県では3番目に広い「石垣島」、沖縄の古くからの集落・家屋を最も残している「竹富島」、イリオモテヤマネコでも知られる自然豊かな「西表島」が主な産地です。島に自生する植物からつくる天然染料で染めた先染めの綿糸を用い、今もなお手織りで織りあげてられています。
 ミンサーとは「綿(ミン)で織られた幅の狭(サー)い帯」を意味します。ミンサー帯は、最も素朴な五つ玉と四つ玉の絣を組み合わせて「いつの世」の模様として、島の娘たちが「いつの世までも末永く仲睦まじく」と想いを込めて愛しい人に送った帯だと伝えられています。

「ミンサー」の魅力

  • 唯一無二の<色>

  • 手仕事の温もりを感じる<手織り>

  • 浴衣から紬・木綿着物まで<年中>使える

さあ、それでは魅力の秘密を紐解いていきましょう…。

<Index>

さんち 風土と歴史

交易が盛んだった琉球の「地の利」

 鹿児島の南端から台湾に至る大小無数の島々は、弓状に連なっており「琉球弧(りゅうきゅうこ)」と呼ばれる文化圏を築いています。琉球弧の先には、中国南部、フィリピン、インドネシア諸島へとつながり、古来より海を渡って様々な文化が行き来していました。14世紀から16世紀の中頃まで栄えた琉球王国の「大交易時代」には、多くの国々との交易を通して、様々な染織技法が伝わり、その影響を受けながら、沖縄の風土・文化に合った独自の染織が花開きました。
 沖縄の島々に独自の染織文化が豊かに存在する背景には、こうした交易ルート上にあるという「地の利」が大きく影響しています。

沖縄県地図

ミンサーの歴史

 ミンサーの歴史は長く、今から約400年前まで遡ります。17~18世紀頃、海洋交易が盛んだった琉球王朝時代の資料には、綿の栽培や交易記録が残っており、当時よりミンサーが作られていたことが伺えます。そのルーツは、アフガニスタンからチベットや中国を経由し伝わったと推定されていますが、詳細はわかっていません。
 今現在主に流通しているミンサー帯の発祥は「竹富島」といわれ、元々、藍一色で染められた綿糸で織られた幅の狭い「ミンサーフ(ミンサーウ)」が起源とされています。通い婚の風習があった当時、女性が大切な男性への愛の証として送られ、ミンサー織の最大の特徴とも言える「五つ」と「四つ」の絣模様には、「いつ(五)の世(四)までも末永く」という意味が込められています。また、帯の両脇にあるムカデの足に似た模様には、「足しげく私の元へ通ってください」という通い婚の風習らしい想いが込められました。帯の色の「藍」を出すには、何度も藍を重ねて染め上げることより「愛を重ねる」とも言われ、大変ロマンティックないわれのある織物です。
 現在は、かつての染織技法を今に伝えながら、天然染料の組み合わせの創意工夫により、様々な色彩を表現できるようになり、様々なデザインの帯が生まれています。

さんち:沖縄県 石垣島・竹富島・西表島

 ミンサーのふるさと「竹富島」は、石垣島からフェリーで約10分ほどの距離にある外周9.2kmほどの小さな島で、沖縄特有の赤瓦の屋根の民家の間を水牛がゆっくりと歩く古くからの原風景が現存しています。また「石垣島」は、沖縄本島から南西へ約400kmに位置し、沖縄本島・西表島に次いで県内3番目の大きさを誇る自然豊かなリゾートシティです。透明度の高い海を求め、世界中から多くのダイバーが訪れています。

唯一無二の<色>

沖縄の豊かな自然が生む、沖縄の大地の<染め>

 ミンサー帯は、100%天然の草木染めでつくられています。沖縄でこうした草木染めができるのは、沖縄の草木の生命力があってこそです。島の四季折々の植物を生命に満ち溢れる時期に採取し、自然から出る美しい色を引き出しています。南国の太陽の光と豊かな水から出る絶妙な色合いは目にも体にもやさしいものになっています。米沢や結城など一部本土でも天然草木染をやっていますが、これほどの豊かな色が出せるのは沖縄だけと言っても過言ではありません。それは草木の力が全国的に弱まっているからとも言え、沖縄の豊かな自然が生む、沖縄の大地の染めともいえるものが、ミンサーの天然草木染めです。

島に自生する植物からつくる染料

 草木染めに使われる樹木は、島に自生している植物です。これらの植物は、染料として売っているわけではなく、つくり手の方が山に入り、自ら採ってきています。「クワディーサー」は、幹と枝とで染めた時に出る色が違います。それから「ヤエヤマキアイ」「ゲッキツ」「ヤエヤマアオキ」また、、沖縄では防風林としても植えられ、身近な「フクギ」、そして「クール(紅露)」。これらは石垣島と竹富島と西表島に自生している植物です。

染料

クワディーサー(モモタマナ)

クワディーサー(モモタマナ)

大きな葉を染色に使いますが、幹や枝でも異なった色が楽しめます。色は黄土色~鉄色系まで多岐にわたります。

ゲッキツ(月橘)

ゲッキツ(月橘)

奄美大島から東南アジアにかけて分布するミカン科の小高木。枝と葉で染めると若草色に染まります。

ヤエヤマキアイ(ナンバンコマツナギ・インド藍)

ヤエヤマキアイ(ナンバンコマツナギ・インド藍)

布を藍色に染めるインディゴ染料が得られる植物の一つ。木から採取できる藍で(木藍)と呼ばれます。

フクギ(福木)

フクギ(福木)

樹皮や割いた木片を煮詰めて染料を作ります。染料として煮出されたフクギは淡い黄色をしています。

クール(紅露・ソメモノイモ)

クール(紅露・ソメモノイモ)

ヤマイモ科の植物で、地中に暗赤色の大きな塊根をつくります。赤みの強い褐色系の色が出せます。

ヤエヤマアオキ(八重山青木)

ヤエヤマアオキ(八重山青木)

石垣島を自生の北限とする熱帯性常緑小高木で、東南アジアなどを中心に分布。ノニとしても知られます。

一期一会の<色>

 草木から染料を煮出す際、どのくらいの温度で何分くらい煮出すのか、化学染料のような決まったレシピはありません。どのくらいの温度で煮出して、何回染めて、どういう風に水洗いをして干すかにより、出る色がまったく違ってきます。草木は生きていますので、その草木1本1本の状態によっても出てくる色が全部違ってくるのです。また100%天然染料ですので、色が経年で少しずつ退色していき馴染んでいくのも味わいの1つです。

「フクギ」で染めた糸

「フクギ」で染めた糸

「藍」で染めた糸

「藍」で染めた糸

フクギ × 藍 でつくった「緑」

フクギ × 藍 でつくった「緑」

手仕事の魅力 <織り>

「手仕事」ということ

 沖縄には「てぃあんだー」という素晴らしい言葉があります。直訳すると、てぃ(手)あんだー(脂)。つまり、手の脂で念を入れて料理を作ること、手塩に掛けることを意味しています。例えば、「手伝う」という言葉には「手を通してしか伝わらない」という意味を含みます。「手がこむ」は技術、「手を打つ」は方策、等々、人の「手」を介す言葉には、良い意味が込められています。
 ほとんどの製品が機械化され、化学染料でつくられているものが溢れている昨今、着物でも洋服でも、手織りで天然染料の草木染めのものは、なかなか手にふれる機会が少ないかもしれません。ミンサーは、人の手によってつくりあげられる、非常に文化的な織物なのです。

「手織り」

 ミンサー帯は、手投げ杼と、ミンサー用に改良された八重山式の高機を使って、全て手作業で織られています。沖縄の豊かな自然の中、波の音に、どこからか聞こえる三線の音色、そしてパタンパタンと織物をする音を想像するだけでも、気持ちが安らいでくるようです。ミンサー帯に限らず、現在このような手織りの技術を持つ織工さんはどこも高齢化・後継者不足といった問題を抱えています。株式会社やまとは、こうした技術を未来へとつなぐ取り組みを、これからも行って参ります。

ミンサーが織り上がるまで

1 デザイン/意匠

 古来より受け継がれてきたミンサーならではの「五つ玉」「四つ玉」の絣文様をモチーフに用いながら、現代の感覚にアップデートしながらデザインを決め、図案に起こしていきます。

2 染色

 綿糸を精練し細かい汚れを落としていきます。その後、糸を経糸・緯糸・絣糸などの種類ごとに分け、天然染料で染めていきます。柄を表現する絣糸の染色は特に繊細な作業です。

3 糸繰り(管巻き)

 精練・染色を済ませ、乾燥させた綛糸(かせいと)を、ボビンといわれる管に巻き取っていきます。

4 整経(せいけい)

 意匠に添って綛糸を巻いたボビンを並べ揃え、色ごとに経糸の本数と長さを整えます。織り工程での糸のたるみや、絣のズレを防ぐ大切な作業です。

5 糊張り

 糸に糊をつけ、張り伸ばします。天候・湿度によって糊を乾燥させる時間は2日間に及ぶこともあります。

6 絣くくり~染色

 ミンサーの柄を生み出す工程です。柄の部分に染料が染みこまないよう、絣糸を手作業で括っていきます。正確にきつく縛ることで美しい絣模様が織りだされます。絣くくりの工程を経て、糸はもう一度染められます。くくった部分をほどくと、そこには染料が入らず、柄となります。

7 仮筬通し(かりおさどおし)

 図案に添って、経糸を割り振っていきます。経糸をそろえるための筬(おさ)という隙間に糸を1本ずつ通していきます。織りの工程では、この筬を取り外すため、仮筬通しと呼ばれています。

8 巻取り

 機織りの工程前の下準備の最終段階です。一定の張力を保ちながら、経糸を揃え、巻き取ります。

9 綜絖通し(そうこうとおし)

 巻き取った経糸を、機(はた)に乗せ、綜絖(そうこう)と呼ばれる、糸を上下させて織り進めるための仕掛けに経糸を通していきます。

10 製織

 多くの下準備を経て、ようやく織りの工程へと移ります。ミンサー用に改良された八重山式の高機を用い、経糸を上下に動かしながら、手投げ杼(てなげひ)を使って緯糸を通し織り進めていきます。

コーディネート

ミンサー帯は、年代を問わず、ゆかた・夏着物をはじめ、木綿の着物などにも合わせてコーディネート出来、カジュアルシーンを彩ります。年中お使いいただけ、締めれば締めるほどに馴染みがよくなります。

 ミンサー帯は、年代を問わず、ゆかた・夏着物をはじめ、木綿の着物などにも合わせてコーディネート出来、カジュアルシーンを彩ります。年中お使いいただけ、締めれば締めるほどに馴染みがよくなります。

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帯1000本でつくった大きなミンサー帯

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