ゆかた|籠に勝虫 墨
帯|麻角帯 ふくれ織 よろけ縞 墨黒


大分県日田市で江戸時代からつくられている陶器「小鹿田(おんた)焼」のギャラリー鹿鳴庵 庵主の佐藤哲也さん。きものやまとでは、 ONE FUKUOKA BLDG.店で取り扱った「たからもの」として、若手作家さんの作品を中心に、小鹿田焼のセレクトをしていただきました。
ギャラリー運営の傍ら、書道家としても活動されたり、茶道も嗜まれたりと幅広く活動されていますが、現在に至るまで、どんな歩みがあったのでしょうか?

「もともと55歳までサラリーマンをしていたんですが、ずっと『思いや思想をかたちにしたい』という思いはあったんです。実家に父の書のギャラリーと母の竹織物の工房があって、それをきっかけに、自分なりの表現ができないかと思ってこの道に入りました。書は書道家の父の影響で6歳からずっと続けていて、特別に書家と名乗っていたわけではなかったんですけど、アメリカでの個展をきっかけに、自分をどう表現するかを強く意識するようになりました。今は、小鹿田焼のセレクトと書の活動を並行してやっていますけど、自分の中では全部つながっていて、根底にあるのはやっぱり“禅”の思想なんですよね。」

ものづくりや空間づくりで大切にしていることは何ですか?
「全部、禅の考え方から来ていますね。例えばお店では、器の並べ方や空間の見せ方もそうですし、香りもすごく大事にしています。香は開店時間に焚くんじゃなくて、少し前に焚いて“残り香”を感じてもらう。そういうさりげなさが心地よいんですよ。もともとカフェを始めたことがきっかけで茶道を学ぶようになって、禅の考え方とより深くつながっていった感覚があります。お茶の所作や空気感も、今の空間づくりにすごく影響していますね。書でも同じで、『黒を書く』というより『白の余白をどう活かすか』。子どもの頃からずっと言われてきたことなんですけど、今になってやっと腑に落ちている感覚があります。そういう積み重ねが、結果的に空間や表現に出ているのかなと思います。」


佐藤さんにとって、ゆかたはどんな存在ですか?
「昔は『梅雨明けからお盆まで』みたいな決まりごとが強かったと思うんですけど、今は暑い時期が長いじゃないですか。だから、もっと自由に長く着ていいと思うんですよね。印象に残っているのが、9月の終わりに博多駅で見かけた女性なんですけど、ゆかたで小走りしていて、それがすごくかっこよかったんです。ああ、この人ずっと夏を楽しんでたんだな、っていう感じがして、すごくいいなと思いました。やっぱりゆかたは、特別な日というより日常で着たいですね。5人くらいでゆかたを着て、ふらっとご飯に行くとか、それだけで全然違う時間になると思うんです。街を歩くだけでも絵になるし、なんかちょっと特別に見える。一人でもいいけど、何人かで着るとよりかっこいい。そういう楽しみ方が増えると、もっと身近になり、沢山の人がゆかたを羽織ると町の風景も日本らしく楽しくなると思います。」

ゆかたを日常で楽しむ魅力って、どんなところにあると思いますか?
「まず気軽ですよね。着物より入りやすいし、最初の一歩としてすごくいいと思います。それと、姿勢が自然と良くなるんですよ。歩き方も少し意識するし、所作も変わる。そうすると、なんか堂々として見えるんですよね。あとは、風の抜け方とか、肌で感じる心地よさ。そういう言葉にしにくい感覚がすごく大事だと思っていて、そこがゆかたの魅力だと思います。」

これから、ゆかたやきものをどう楽しんでほしいですか?
「『文化だから』とか難しく考えなくていいと思うんですよ。まずは単純に『かっこいい』と思えるかどうか。それが入口になると思います。日常で着る“ケ”があるから、特別な“ハレ”がより引き立つ。そういう感覚で、もっと自由に楽しんでもらえたらいいなと思いますね。」

6月11日㈭より、きものやまと表参道店にて、佐藤さんにセレクト頂いた小鹿田焼のお取り扱いを開始。6月13日㈯14日㈰には、ご入店いただく予定です。7月には台湾での展示、さらに来年はアメリカでの展開も予定されています。個展の場では、きものやゆかたを取り入れた装いで立たれるとのこと。作品とともに、その佇まいにも注目です。日本文化を「自然に、かっこよく」伝えていく――佐藤さんの今後のご活躍にも期待が高まります。

佐藤さんの今後の活動についてこちらをご覧ください。