ゆかた| [江戸日和]ゆかた 色絵菊唐草 青,
帯| 桐生刺繍へこ帯 かすみ草 濃紺


家族についての実話を元に綴ったエッセイ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が大きな反響を呼び、2023年にはNHKでドラマ化。音声配信やテレビのコメンテーターなど、今や執筆だけに留まらず多方面で活躍する作家の岸田奈美さん。ゆかたを着るのは本当に久しぶり、とのことですが、着てみた感想はいかがでしょうか?
「私はパソコンを長時間やるので猫背になっちゃうことが多いんですが、ゆかたを着ると、すっと背筋が伸びるのは気持ちいいですね。自分では選ばない柄でも、実際に着てみると、想像していた印象と全く違うのも面白かったです。顔がパッと明るくなって、知らなかった新しい自分を発見した気分になりました。このゆかたは新品だから生地がパリッとしているけれど、もっと湯葉みたいにクタクタになって、体に馴染むまでいっぱい着てみたいですね」

ゆかたにまつわる楽しい思い出話も語ってくれました。
「子供の頃は、夏祭りにいつも着ていました。ゆかたやあの金魚みたいな帯を持ってみんなで親戚の家に集まって、まずお風呂に入るんです。それで汗が引く。ご飯を食べたら着付けをしてもらって、お祭りに繰り出して…。楽しかったなぁ。」


大学1年の時には、友達と浴衣を着て大阪の天神祭へ行ったことが、深く印象に残っているそうです。
「ちゃんとしたゆかたを着たのはその時ですね。実は私、天神祭の日に生まれたんです。母からずっとその頃の話を聞いていました。母は陣痛でお腹がものすごく痛いのに、お祭りだからと鮎やちらし寿司をもらって、それを痛い痛いって泣きながら食べて。遠くに賑やかに鳴り響く太鼓の音を聞きながら出産したそうです。私は神戸で育ったので、大阪のお祭りへ行くのも初めてで、めっちゃ嬉しかったんですよ。そうしたら母が祖母に作ってもらったゆかたがあるからって出してくれました。青い絞りのきれいなゆかたで、こんなのが家にあったんだってびっくり。私がすごく喜んでいるのを見て、母も嬉しかったみたいですね」

それではゆかたを着て昼間に行ってみたいところは?と聞いてみると、意外な答えが。
「どこにも行きたくない!行くとしたら、自分が目立つところ。輝ける場所(笑)。夏のお祭りは混んでいるし、みんなゆかたを着ているから、別に珍しくないですし。例えば梅雨の時期の奈良とか。古い建物が好きなので、奈良ホテルみたいなクラシックホテルで静かに過ごすのが良さそうです」

2025年2月には最新刊「もうあかんわ日記」を出版し、この本では中の挿絵も全て自分で描いたそう。
「ブックデザイナーの祖父江慎さんに毎回『ここが下手』って優しく指導されながら頑張って描きました。少しは上手くなったのでぜひ見ていただきたいです」

配信サイト『note』では、自身のライフワークでもあるエッセイを毎週更新。笑いと涙と愛溢れる岸田ワールドにグイグイ惹き込まれます。