さんち大辞典 [ ち ]
注染染め

Cyusen

「注染染め」とは?

 注染染めは、日本独自の染色技法で、染料のにじみやぼかしを活かし、手仕事で表現されるやわらかく優しい風合いが楽しめます。また染めるとき、染料を上から注ぎ下に抜くため、裏表なく染まり、色あせしにくいのも特徴です。素材は木綿を主とし、通気性が良く、天日乾燥をするので、やわらかく肌にもやさしいものになります。

<Index>

さんちの風景

さんち ―静岡県 浜松市―

 浜松市は、静岡の西部、遠州地方にある都市です。ホンダ発祥の地であり、スズキが本社を構えるなど、有数の自動車工業都市でもあり、ヤマハやカワイ、ローランドなど多数の楽器メーカーが立地する「楽器の街」としても有名。
 やまとの注染染め浴衣は、そのほとんどが「静岡県 浜松市」で作られています。大正12年の関東大震災で職場を失った東京浴衣産地の職人が新天地を求め浜松に移り住むようになりました。浜松は浴衣を染めるために必要な水資源(天竜川の豊富な水)、反物乾燥に適した空っ風、さらに機械の開発も盛んだったため、浴衣の産地として発展しました。また、東京と大阪の中間地点に位置するので、生産と供給のための良い条件が整っていました。
 広大な地域で豊かな自然環境にも恵まれており、名産物も多数。名の知れた浜名湖はうなぎやあさり、クルマエビなどが獲れ、まさに海産物の宝庫。その様な豊かな土壌で、「注染」は育まれてきました。

静岡県浜松市
JR浜松駅

JR浜松駅の新幹線コンコースにはヤマハのグランドピアノがあり、誰でも弾くことができます。

浜名湖

浜名湖は、海水と淡水が入り混じっている「汽水湖」としては、日本で一番長い湖です。うなぎの養殖でも有名です。新幹線からも眺めることができ、見ると元気になります。

浜松餃子

キャベツ、ニラ、玉ねぎ、豚肉で作られたタネを皮で包んだ野菜が多めのあっさりとしたB級グルメ、浜松餃子。中央のもやしがポイントです。とてもおいしいです。

赤電

市内を縦断する遠州鉄道。別名赤いから赤電。

中田島砂丘

絶景で、自然が作り出す美しい風紋が見られる中田島砂丘です。遠州灘から吹く「からっ風」と呼ばれる強い風を体全体で感じることができます。春から夏にかけて、アカウミガメが産卵のために砂丘を訪れます。駅からはちょっと遠いですが、是非訪れてほしい場所です。

凧

この色とりどりの凧は、中田島砂丘近くにある、浜松まつり会館のものです。実は、浜松では毎年ゴールデンウィーク期間中に、かなり激しい凧あげ合戦と御殿屋台引き回しが見られる祭りを開催しています。3日間で200万人の参加者がいるまつりは、圧巻!この会館では、そのまつりを感じることができます。
入場料大人400円。中学生以下、70歳以上の方は無料。

注染染めの工程

1 糊置き(のりおき)

方眼紙に点で描写された図案

図案に添って型紙をつくります。型紙を木枠に貼り、防染めのために糊付けを行っていきます。生地を型の長さで折り返し、表に出た面一枚一枚に糊を繰り返し付けていく大変な作業です。

色糸の見本

蛇腹状に糊を塗り重ねられた生地の表面に、糊が流れるのを防ぐため、「おが粉」をつけておきます。

手仕事と道具

板場

糊を置いて柄をつけるところを「板場」といいます。

板場

糊を置いて柄をつけるところを「板場」といいます。

手作りの防染糊とおが粉

防染糊
おが粉

防染糊は粘土、もち米、海藻、ぬかをいれて炊いたものです。べたべたしているので、作業するためにコーティングする役割がおが粉。

特注のヘラ

特注のヘラ
特注のヘラ

木のヘラも使っていくうちにどんどん摩耗していき職人の手に馴染んでいきます。東京の建具屋さんに特別につくってもらっています。もともとへらも半分の大きさだったが、1回の動きで良いように大きく道具も進化。

2 染め

染め

染める部分(柄)まわりに「土手」をつくり、染料が入り込むのを防ぎます。

染め

注ぎ口が細長い「やかん」を使って生地に染料を注いでいきます。生地を乗せている台には圧着機がついており、裏側から染料を吸い込む仕組みになっています。

染め

土手の中を染めていきます。ぼかしは2色の染料を同時に注ぐことで表現します。大変繊細な熟練の技を要します。

染め

これらの工程を、裏返して生地の裏側も同様に染めていくことで、注染ならではの「色の深み」が生まれます。

手仕事と道具

紺屋

「やかん」と呼ばれるじょうろのような道具で染めるところを「紺屋」といいます。「板場」と「紺屋」はセットです。

紺屋

「やかん」と呼ばれるじょうろのような道具で染めるところを「紺屋」といいます。「板場」と「紺屋」はセットです。

特注の「やかん」

やかんもブリキ屋さんに特注して作ってもらっています。先が絶妙なカーブで液だれをさせない作りになっており、職人技を感じます。

特注の「やかん」

やかんもブリキ屋さんに特注して作ってもらっています。先が絶妙なカーブで液だれをさせない作りになっており、職人技を感じます。

3 洗い・脱水・干し

洗い・脱水・干し

大きな水槽で糊と余分な染料を落としていきます。きれいになったら巨大な脱水機にかけます。

洗い・脱水・干し

約12mある反物を吊るし、天日干しします。乾いたら反物の状態に整えて完成です。

手仕事と道具

水元・ガチャ

染めあがった生地を1枚1枚丁寧にはがしながら水のなかに反物を泳がせていきます。水は1日で5トン~7トン使用。ガチャガチャ音を立てて反物を洗う機械、その名も「ガチャ」。

水元・ガチャ

染めあがった生地を1枚1枚丁寧にはがしながら水のなかに反物を泳がせていきます。水は1日で5トン~7トン使用。ガチャガチャ音を立てて反物を洗う機械、その名も「ガチャ」。

7mもの立干し

高さ7メートルに吊るされた、気持ちよさそうな反物。揺られながら1日で乾きます。

7mもの立干し

高さ7メートルに吊るされた、気持ちよさそうな反物。揺られながら1日で乾きます。

こだわりの生地

生地はシャトル織機という非常にゆっくりな織機で織られ、晒、染めの工程を経てできあがるのでテンションのかかっていない、やさしいやわらかい風合いに仕上がります。洗えて、吸水性、速乾性に優れ、洗えば洗うほど肌になじむのも特徴です。

こだわりの生地

生地はシャトル織機という非常にゆっくりな織機で織られ、晒、染めの工程を経てできあがるのでテンションのかかっていない、やさしいやわらかい風合いに仕上がります。洗えて、吸水性、速乾性に優れ、洗えば洗うほど肌になじむのも特徴です。

浜松注染を支える職人さんたち

職人さんのおはなし

二橋染工場 楠さん 「板場」

「作業をする際、気を付けていることはスピードと丁寧正確な作業です。」

そういいながら、楠さんは手際よく糊付けしていきます。
4反分の生地2キロに糊がつくと結構な重さになるので体力必須な作業です。

二橋染工場 一瀬さん 「紺屋」

「昔よりも、使う色が増えました。昔は紺、ブルー、黒しかなかったんですけど。なので今は色の勉強をしています」

と23年染めをしている大ベテランの一瀬さん。
手際よく反物にぼかしを表現する姿は、魔法のよう。

歴史を感じる壁掛け時計と二橋染工場の代表取締役の二橋さん

注染染めについて教えてください。

昔は、全国各地にこうした染めは沢山あったんです。浜松はそそぎぞめと言っていたし、大阪はつぎぞめと呼んでいました。昭和10年くらいに、「注染」という名前に全国で統一されたんですよ。

ものづくりで大切にしていることは何ですか?

お客様の望んでいるイメージをいかに自分で考え表現できるかですね。頂くイメージから、デザインと配色を一手に引き受けて形にすることが多いです。また、実際染めは、すべて人の手でやるので、機械を使って染めるのと、全く違う苦労があります。でもそこが良さであるので、手でやることを大切にしながら、お客様の望むものを提供していきたいと思っています。「できないものはない」という、浜松のやらまいか精神をもって、ものづくりをしています。

武藤染工 たいちさん

注染染めの魅力はなんですか?

結局、人の手ですべて染めているのが魅力ですね。その時その時でぼかしなどの雰囲気が変わるんです。それが手作りの魅力でもあるんですけど、製品としての難しさもそこにはあって、、、。どこで落ち着かせていくかも考えながら全員が納得できるものづくりを目指す部分は面白いですね。

これからチャレンジしたいことはありますか?

注染という工程自体は、もう変わらないと思いますので、その工程を最大に活用することは何かを常に考えています。いろんな形の中でチャレンジしていけることがあればどんどんやっていきたいですね。

LINE UP

きものやまとオリジナルデザインの注染浴⾐(オーガニックコットン100%)です。鉄線(クレマチス)の花⾔葉は、美しい精神。媚びない凛とした佇まいが魅⼒です。滑らかな曲線で全体を描き、バランスよく花を配置しました。同⾊系のぼかしがポイントになり、洗練された着姿になります。

きものやまとオリジナルゆかた
注染 鉄線 深紫
(ゆかたお仕⽴て代込み)
44,000円(税込)

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⽉下美⼈は芯の強さとはかなさが共存するモチーフ。傘は⾯を隠す奥ゆかしさを表現しています。そんなモチーフを⼤胆に、伸びやかに組み合わせることで他にはない可憐で粋なデザインに仕上げました。深みのあるグリーンは肌を美しく魅せます。

きものやまとオリジナルゆかた
注染 傘と⽉下美⼈ 深緑
(ゆかたお仕⽴て代込み)
44,000円(税込)

商品はこちら

切子柄の中でも定番の「切子菊」。菊は音読みから「喜久」とも書け、喜びを久しくといった縁起の良い柄でもあります。飽きのこない伝統文様は、コーディネートを変えて永くお召しいただけます。

J.trad 注染 「LINK」 切子菊/白
(ゆかたお仕⽴て代込み)
44,000円(税込)

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オーガニックコットン糸をつかった明るい白の生地にジャパンブルーのコントラストが鮮やかに映える清涼感あるゆかた。モチーフは古くから好まれてきた切子の柄ながら、モダンな印象のデザインに仕上がっています。

J.trad 注染 「LINK」 切子/青
(ゆかたお仕⽴て代込み)
44,000円(税込)

商品はこちら