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博多織

HAKATA ORI

「博多織」とは

博多織は、たくさんのタテ糸に数本の糸をまとめ合わせた太いヨコ糸を強く打ち込んでつくられる絹織物で、主に福岡県と佐賀県で生産されています。主原料には絹糸(生糸)が使われ、工程は企画、デザイン、意匠、染色、整経、製織、力織機など下準備を含め多岐に渡り、それらすべてに高度な技術を要します。博多織の起源は古く、鎌倉時代にまで遡ります。当時の最先端技術であった中国の唐織を持ち帰ったことがルーツと言われています。また博多織は、しなやかでありながらコシがあり、締めやすく緩みにくい特性より、特に「帯」として高い評価を得ています。さんちでの生産の多くが「博多帯(名古屋帯や半幅帯、袋帯、角帯など)」ですが、その他、着付けに使用する伊達締めや、着物の着尺、草履やバッグなどの小物・雑貨などもつくられています。

博多織インタビュー動画

博多織の歴史、博多織の魅力とは…? 博多織 最古の織元「西村織物株式会社」の西村 聡一郎社長にお話しを伺いました。

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<Index>

さんち 風土と歴史

日本最古の港であり、国際都市として栄えた「博多」

 朝鮮半島やアジア大陸に近い位置にある博多は、日本最古の港とも言われ、古来より遣隋使や遣唐使などを通して、大陸との交易で栄えました。
 博多という地名の由来は、「土地博(ひろ)く人・物産多し」という言葉から「博多」、大きな鳥が羽を広げたような地名になぞらえて「羽形」、大陸へ向かう船が停泊する潟から「箔潟」、射た鶴の羽が落ちたことより「羽片」など様々な説があります。

日本地図

約780年前に中国から伝わった絹織物

 「博多織」が生まれたのは、1241年の鎌倉時代のこと。博多の商人だった満田弥三右衛門が、禅宗の和尚・円爾(聖一国師)とともに宋(現在の中国)に渡り、唐織の技術を持ち帰ってきたことが始まりでした。
当時の筑紫国 博多は大陸の玄関口として栄え、さまざまな大陸文化が入ってくる、活気にあふれた貿易の街でした。弥三右衛門は織物とともに朱焼、箔焼、素麺、麝香丸の技術も持ち帰り、博多の人々に伝えましたが、織物だけは家伝とし、独自の技術を交えながら末代まで受け継ぎました。
 当時の博多織は細い紐状だったことから、男帯として誕生したといわれています。その後、徐々に幅が広がり、江戸時代中期になると、現代のような広い帯となりました。糸は当時から絹を使っており、大変貴重な織物だったことが想像できます。

 福岡県福岡市博多区にある承天寺には「饂飩蕎麦発祥之地」の石碑があります。博多織と共に、うどん・そば・羊羹・饅頭などの製法が最初に伝えられた場所とも云われています。また承天寺は、有名な博多の夏祭り「博多祗園山笠」発祥の地としても知られています。
博多織とゆかりの深い承天寺では、博多織工業組合の最大の年中行事として毎年11月に開催される求評会(新作発表会)が催されています。求評会では普段は拝観できない境内を一般客にも開放し、新作の博多織はもちろんのこと、紅葉や枯山水の庭での野点の茶会、博多芸妓の舞を楽しむことができるとあって、多くの博多織ファンで賑わいます。

博多といえば…

大宰府

 九州最大級の規模を誇る太宰府天満宮は天神様をお祀りする全国の12000社の天満宮の総本山です。天神さまとは、菅原道真公のこと。「学問・至誠・厄除け」の神様として知られています。
 磨かれたかわいらしい御神牛の頭をなでると知恵を授かるというジンクスがあります。
 参道で販売されている「梅が枝餅」は、梅の印が押された素朴な餡餅。出来立て熱々でおいしいです。

太宰府天満宮

「天神さま」と崇められる「太宰府天満宮」

御神牛

「御神牛」

梅が枝餅

「梅が枝餅」


承天寺

 博多祇園山笠の創始者といわれる聖一国師(しょういちこくし)によって開山されました。境内には、博多織の始祖、満田弥三右衛門の碑や、聖一国師が伝えたとされる饂飩や蕎麦や饅頭発祥の記念碑があります。

仁治3年(1242年)創建 承天寺

仁治3年(1242年)創建 承天寺

饂飩蕎麦発祥之地の石碑

饂飩蕎麦発祥之地の石碑

満田弥三右衛門の碑

満田弥三右衛門の碑

仁治3年(1242年)創建 承天寺

仁治3年(1242年)創建 承天寺

饂飩蕎麦発祥之地の石碑

饂飩蕎麦発祥之地の石碑

満田弥三右衛門の碑

満田弥三右衛門の碑


博多のうどん

 1241年、中国の宗より帰国した聖一国師が製粉技術を持ち帰り饅頭、蕎麦、饂飩の製法を広めました。これにより、博多は饅頭、そば、うどんの発祥の地とされています。
博多のうどんは柔らかくふわふわな麺と澄んだつゆが特徴。やさしい味わいのつゆと柔らかな麺が絶妙にマッチする福岡のソウルフードです。定番のトッピングは、ゴボウの天ぷら「ごぼ天」。

ごぼ天うどん

定番の「ごぼ天うどん」

博多の旦那衆と博多織

 博多織が生まれた街には、様々な祭りがあります。代表的なものが「博多祇園山笠」で、これも聖一国師が始めたといわれています。
祭り好きの旦那衆は、祭り事となると1ヶ月も前から商売を忘れ、準備に取り掛かりました。ですから、旦那衆が不在の間、ごりょんさん(奥さん)たちが家を守り、旦那衆に代わって商売を切り盛りしたのです。そして、祭りが終わった暁には、1ヶ月留守にしたお詫びのつもりで、夫から妻へ、帯ときものを買ってあげるのが習わしでした。気質は荒いけど、心意気はいい。一本気のあるところが博多の男なのです。

門外不出の「献上柄」

 博多織には「献上柄」といわれる博多独特のデザインがあります。そのモチーフとなったのが、仏具の「独鈷」と「華皿」と「縞」。この柄は、弥三右衛門とともに宋に渡った聖一国師の提案によるものでした。「献上柄」という名称は、江戸時代に福岡を治めていた筑前藩主・黒田長政が、徳川幕府への献上品として博多織を選んだことに由来します。
人々の生活が裕福になり、織物の技術が発展してきた江戸時代。一般大衆も織物を手にできるようになりましたが、「献上柄」だけは黒田藩が厳格に管理をし、12軒の機屋以外には作らせませんでした。博多織が西陣織のように全国に普及しなかったのは、そのような背景があるのです。

独鈷(どっこ)

独鈷(どっこ)

独鈷(どっこ)

独鈷はもともとは鉾のような武器で、仏教上では、煩悩を破砕し、菩薩心を表わす密教法具の一つです。転じて「除災」「厄除け」を意味すると言われています。

華皿(はなざら)

華皿(はなざら)

華皿(はなざら)

華皿は、仏具の一種で、仏の供養をするときに花を散布するのに用いる器です。「おもてなし」「祝福」を意味するとも言われています。

親子縞(中子持)

親子縞(中子持)

親子縞(中子持)

太い縞が細い縞を挟むように配され「親が子を守る」を表します。

孝行縞(両子持)

孝行縞(両子持)

細い縞が太い縞を挟むように配され「子が親を慕う」を表します。

 親が子供を守る姿を表す「親子縞」、老いた親を子供が支える姿を表す「孝行縞」という2つの模様も相まって、いつしか博多織は、「嫁いだ先でも家庭円満でありますように」との願いが込められた嫁入り道具として庶民の間でも愛されるようになりました。

時代の変化と博多織

 明治時代に入ると、博多織は自由に生産できるようになり、「献上柄」の帯も一般大衆に広がっていきます。そして時代は、大正から昭和へ。
終戦を迎えた昭和20年代は、まず何より生活をしていくことが第一でしたが、昭和30年代に入ると衣服を整える余裕も生まれ、織物が広く普及します。昭和30〜40年代は博多織の全盛期。機屋の数も急増しました。ところが昭和40〜50年代、自動車が一般家庭に普及すると、「きものでは運転がしにくい」と身に着ける衣服も変わり、きものが敬遠されるようになりました。そして、世の中は男女参画の時代へ。共働きの家庭が増え、家庭は豊かになりましたが、同時に、きものを着て帯を締めて、ゆっくりと過ごす時間は失われていきました。そしてその頃から、きものに対する考え方も変わってきたのです。
従来の日常着から、より良いもの、自分の個性に合ったものを求める人が増え、作る側も、以前のようにがむしゃらに大量生産をする姿勢から、より品質の高いものづくりをしようと、意識が変わっていきました。こうして、従来の画一的なデザインから、機屋ごとの個性が花開くのがこの時代です。博多織は大きな転換期を迎えたのです。
現在では、すっかり全国区となり、広く愛用されている博多織ですが、その地位に甘んじないのが博多商人の心意気。新しもの好きの博多商人は、伝統を受け継ぎながらも、現代に合った色目や新しい文様を生み出し、若い世代にも博多織を取り入れてもらえるよう、新しいものづくりに取り組んでいます。「きものが好き」という人がいる限り、その想いに応え続けること。それが、歴史を次に繋いでいく職人たちの使命なのです。

博多織の出来るまで<制作工程>

締めやすく緩みにくい博多織の魅力の秘密とは?

 博多織は、他の産地ではなかなか見られない厚手の織物です。その理由は、独自の織り方にあります。6,000〜15,000本もの経糸(たていと)を使い、それに太い緯糸(よこいと)をしっかりと打ち込んでいくことで、ハリのある生地に仕上げていきます。
また、柄の作り方にも特徴があります。例えば、京都の西陣織が緯糸で柄を作るのに対し、博多織の場合は、地の糸のほかに経糸を組み込み、経糸で文様を編んでいきます。その織り方ゆえに、献上柄や縞・段文様といったシンプルな文様が多く作られました。それらの文様は「紋紙」という穴の空いた厚紙に起こされ、データ化された後に、織機で織られます。

 独特のハリとツヤ、それでいてしなやかな締め心地と、きめ細やかなで密な織り。主原料には絹糸(生糸)が使われ、工程は企画、デザイン、意匠、染色、整経、製織、力織機など下準備を含め多岐に渡り、それらすべてに高度な技術を要します。また、模様や織りなど技法の違いにより、「献上・変り献上」(けんじょう・かわりけんじょう)、「平博多」(ひらはかた)、「間道」(かんどう)、「総浮」(そううけ)、「捩り織」(もじりおり)、「重ね織」(かさねおり)、「絵緯博多」(えぬきはかた)という伝統的な技法があり、「博多織 伝統7品目」と呼ばれています。
ここでは、代表的な帯の制作工程を抜粋してご紹介いたします。

1 企画~デザイン/意匠

古来より受け継がれてきた伝承文様や、日本の四季や身近なモチーフなどを、現代の感覚にアップデートしながらデザインを決め、図案に起こしていきます。作成された図案を基に、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の交差具合・糸数などを示す織組織を描き起こします。大変神経を使い、極めて緻密な作業となります。

2 精練/染色

石鹸や炭酸ソーダを使って、生糸を丁寧に洗うことで、余計な油分や汚れが取り除かれ、絹糸にふっくらと光沢が出てきます。その後、意匠に基づいて糸を染め上げていきます。狙った色通りの色を出すのには熟練の経験を要します。染め上げた糸は、撚れや絡みを取り除き、均一な状態に整えられ、次の工程へと移ります。

3 整経/機仕掛…経糸の準備

設計図に従い、経糸を並べ、ロール状に巻きつけていきます。博多織では、経糸で色と柄を出すため、1本単位で緻密に作業していきます。整経の後、経糸を上げ下げする織機(ジャガード織機)に糸をかけていきます。糸がかけ終わったら、綜絖(そうこう)に結んでいき、最後に筬(おさ)を通します。繊細な絹糸を多数扱う機仕掛にはかなりの根気を要します。

4 緯合わせ/管巻き…緯糸の準備

細い緯糸を数本の束状にまとめ、太い糸にしていきます。この太い緯糸を使うことにより、博多織独自の「しなやかで丈夫な着心地」が生まれます。ここで作った太い緯糸を、織り工程で使用する杼(シャトル)にセットするため、管に巻いていきます。

5 製織/力織機(りきしょくき)~完成

経糸と緯糸の準備が整ったら、織機がスムーズに作動するよう調整します。製織準備が完了したら、ジャガード機にかけられた「紋紙」という穴の空いた厚紙のデータに沿って、織りあげられていきます。製織された織物は、ひとつひとつ仕上げ検品され、合格製品には組合商標が貼られます。

LINE UP

博多紗献上帯

清涼感のある夏帯として、当社の夏のスタイルでは大変評判をいただいている「紗」の博多織。紗織りの涼しげな風合いが夏の装いにピッタリです。名古屋帯のみならず、半幅帯も取り揃えております。

紗八寸名古屋帯 博多織 七献上 白

紗八寸名古屋帯
博多織 七献上 白

49,500円(税込)

紗八寸名古屋帯 博多織 五献上 憲法茶

紗八寸名古屋帯
博多織 五献上 憲法茶

49,500円(税込)

紗半幅帯 博多織 菱 白藍

紗半幅帯
博多織 菱 白藍

55,000円(税込)

紗半幅帯 博多織 菱 濃藍

紗半幅帯
博多織 菱 濃藍

55,000円(税込)

紗八寸名古屋帯 博多織 せいじ

紗八寸名古屋帯
博多織 せいじ

42,900円(税込)

紗八寸名古屋帯 博多織 カフェオレ

紗八寸名古屋帯
博多織 カフェオレ

42,900円(税込)

紗八寸名古屋帯 博多織 五献上 クリーム

紗八寸名古屋帯
博多織 五献上 クリーム

44,000円(税込)

紗八寸名古屋帯 博多織 五献上 青鼠

紗八寸名古屋帯
博多織 三献上 白×青

44,000円(税込)

コーディネートビジュアル

夏帯の中でも大変人気のある「博多帯」は、単衣の小紋や紬をはじめ、夏着物や浴衣など様々な 着物にコーディネートして楽しめます。浴衣に博多紗献上帯を合わせ、夏の襦袢・足袋を履いてお出かけすれば、浴衣の格もグッと上がり、ちょっと背伸びして素敵なレストランでお食事したりと、幅広いシーンで楽しめます。

その他の博多織

博多八寸名古屋帯 絵緯 トリコ 紺

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75,900円(税込)

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名古屋帯 博多菱象牙

名古屋帯
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紗半幅帯 博多織 裂取り 茶

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紗半幅帯 博多織 ボカシ ピンク

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博多織両面半幅帯 変わり献上

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博多織 腰帯 Black

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博多織 ストライプ草履 黒×生成

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