つくりべ 西村織物

▲工場内の糸繰り機

福岡県 博多 博多織 西村織物

福岡県 博多 博多織

西村織物

記事 2022/06/06

 西村織物は、博多の中心地から約20分、大宰府や九州国立博物館へも足を延ばしやすい筑紫野市に工房を構える、創業160年もの歴史を持つ博多織の老舗の織元です。広い敷地内には、本社社屋、製織工場、ギャラリーがあり、歴史を感じる調度品、丁寧に磨かれた床、手入れがされた庭木を見ると、西村織物の真摯なものづくりの姿勢を肌で感じることができます。博多つくりべの会が発足した2002年から、やまととはものづくりの交流がはじまりました。

西村織物 社訓

「工場入り口の社訓は、西村社長のおじいさんが残したものです」
「誠実これ最上」 何事にも誠実であれ

西村織物 伝統工芸士5名在籍

伝統工芸士5名が在籍。「社員歴が平均20年と、入社すると長く働いてくれています。みんな、織やものづくりが好きなので切磋琢磨しながら腕を磨いています。早く正確に作業する姿をみて、見学に来られた方はみなさん驚かれてますね。」

西村織物 織り糸
西村織物 織り糸

「普通の機屋さんは、糸色が200~300色のところ、うちは800色あるのが特徴です」

西村織物 西村聡一郎 社長

「創業200年に向けて頑張ります」と語る
西村聡一郎社長。
リフレッシュは、
山歩きと温泉に入ること。

作り手インタビュー

意匠 伝統工芸士 一ノ宮 聖四郎さん

博多でおすすめ
「感性を磨くなら、九州国立博物館がおすすめです。」

西村織物 意匠 伝統工芸士 一ノ宮 聖四郎さん

 青山龍水の絵と部屋の壁を埋め尽くす何千冊の本が印象的な一室で、お話を伺いました。

帯のデザインはどんな風にしていくのですか?

 まずは資料収集をします。西村織物には、数千冊の資料があり、そうしたものから参考にしたり、美術館などにいってデザインの源泉を集めてきます。そして、アイディアを出し、デザインスケッチで自由に沢山描いていきます。

スランプはありますか?

 スランプはしょっちゅうです、笑。実は、ハラハラしながら仕事しています。いいものができると嬉しい反面、今度はそれを越えなければならないというプレッシャーはいつもありますね。なので初心を忘れずひたすら頑張る姿勢はずっと持ち続けています。また、よいアイディアを産むために、常にアンテナを張って、視覚的なものだけでなく、聴覚、味覚、嗅覚、触覚などからも感じて、そしてそれを表現することを大切にしています。

美しい、牡丹の帯ですね。

 こちらは、やまとさんのオリジナルの博多帯です。ただきれいな牡丹を描くだけでなく今から咲こうとしているつぼみだったり、ほぼ開いた牡丹だったり、風に揺られている牡丹だったり、いろんな表情を入れました。人の一生の美しさ、はかなさ、強さがこの帯には表現されています。

西村織物 牡丹の帯

博多織との魅力とは
西村織物 牡丹の帯

 博多織をご存じない方に知って頂きたいのは、経糸が他の産地に比べると格段に多い点です。経糸が密ですので、堅牢で丈夫なのでしっかり結べます。また帯を締めているときの絹鳴りの音も心地よいです。丈夫で実用的。こうした工芸品は用の美として、使われて真価がでますので、是非たくさんの方に締めて頂きたいです。

 目指すのはお客様の期待を、自分の生み出す博多織のデザインで超えることです。お客様の考える欲しいものの、その先を提案できるような良い仕事、良いものづくりをしていきたいです。そういった点では、ものづくりには終わりがないですね。ずっと探求していきたいです。

作り手インタビュー

製織 伝統工芸士 作本 義一工場長さん

忘れられない思い出
「忘れられないのは、初めて帯を1本、
1人で織り上げたときの喜びです。
その喜びの積み重ねが今に続いています」

西村織物 製織 伝統工芸士 作本 義一工場長さん
工場長のお仕事をおしえてください

 メンテナンスしながら何十年もつかってる機械が沢山ありますので、その機械の修理をしたり、織の段取りをまとめたりしています。
 使用している機械の仕組みは特殊なアナログの世界なので日々勉強の毎日です。敷地内の大きな3階建て倉庫に、機械の部品は3年分あるので、いつ何があっても使えるようにしているんですよ。また製織の伝統工芸士でもありますので、製品を織ることもしています。そうした日々の仕事に加え、新しいものをどうしたら作れるかも考えています。

織で大切にしていることはなんですか?

 一番のポイントは、平地の織物を織るときです。ちょっとしたことで帯の表情が変わってくるんですね。横糸が少し硬かったり、滑りが悪かったり、機械の筬打ちのタイミングがずれると見え方が変わります。なので本当にきれいでなめらかな帯が仕上がったときは嬉しいです。

 帯は丸巻の状態でお客様に見て頂くことが多いのですが、きれいでなめらかな帯に仕上がると、台に帯を流した時、美しく流れるんですね。その瞬間は非常に嬉しいですし、見ているお客様にも喜んで頂けると思います。
 季節によって糸の状態も変わりますので、梅雨時期に織るのと冬の時期に織るのとは違ってきます。梅雨時期は湿気を含むので、帯が締まる感じがします。冬は乾燥して、帯が柔らかくなる感じがします。なのでそうした気候に左右されず、年間を通して、流してサーッときれいに流れる帯を作ることを目指しています。