ものづくりで大切にしていることは?
みんなが見たことがないような新しいものを生み出したいですね。
みんなが、ワッと驚くような商品をつくりたいと常々思っています。私で今5代目になりますが、代々受け継がれてきた伝統的な織物を中心にものづくりを行っていますが、新しい素材の糸、新しいカラー、ちょっと変わった織組織など、いろいろ取り入れたいと思っています。
米沢のさんちは、和装だけではなく洋装の織物も手掛けていますので、例えば洋装で使っている「モール糸」を帯に取り入れたりもしています。洋装の糸は、レーヨンとか、ナイロンなども多く、シルクではないので、米沢織は絹でなきゃいけないよね、といった昔からの慣習もあり、こうした洋装の糸が用いられることは今まであまりありませんでした。時代の変化と共に、こうしたミックス素材も認められるようになってきました。組み合わせ次第でこれからも、もっともっと面白いものが作れるだろうな~と思っています。
両面使えるだけでなく、左右で柄を別にしており、4通り締められる新しい帯も開発。新しいものづくりに視点を置き、優秀と認められた新商品開発に対して顕彰される一般財団法人きものの森の「ものづくり大賞」も受賞しています。
何か面白いものないかな~と、あちこち散歩しています(笑)。
ものづくりのアイデアは、降ってくるときは突然降ってくるけど、そうでないときは全く降ってこないものですね。日々の中から面白いものがないかな~と、あちこち散歩しています。お散歩のネタはFacebookの投稿に書き溜めたりしていますよ。これまでの投稿も2000件以上になりました。
また、海外に行った際には生地を買いあさったり、面白い織のネクタイなどがあれば、締めないけど買ったりして、それらの織を分解して研究し、新しい織表現を模索したりもしています。
もちろん、新しいものだけでなく、昔のものから着想を得ることもあります。昔のサンプル帳などを見直してみたりしますね。明治30年の見本帳なども残っていますよ。
明治30年の意匠集。当時の端切れなどが見本帳として大切に残されています。
明治時代のタグ。高島屋・伊勢丹・三越など老舗の百貨店の名前もズラリと。
現場のチカラがなくては始まりません。養成し成長する事が大切だと思います。
新しいものづくりをするにしても、糸の特性を理解したり、織機の仕組みが分かっていたり、新しい織の組織が組めたりと、ベースとなる「技術力と知識」がなくては始まりません。京都さんちは、糸は糸屋・織りは織屋と分業制でそれぞれがスペシャリストとしてものづくりをしていますが、ここ米沢では、デザイン・染め・糸準備・織りに至るすべての工程を自社一貫生産しているといった特徴があります。その分、自由に自分たちでチャレンジできるといったメリットはありますが、いろいろな技術を覚えなくてはならず、それぞれ難しさがあります。これらの技術をしっかり身につけることが機屋のチカラとなります。いかに養成して、レベルアップさせていくか、ということが最も大事だと思っています。
「織の現場」。ジャカード織機が並びます。
織機も自分たちで手入れをします。古い機械なので入手できない部品もあるため、ストックしています。
奥様の作業場。自分が実際に使ってみて、素敵!可愛い!と思える感覚のものづくりを大切にしています。
奥様の作業場のチェストも、お手製だそうです。細部にものづくり人のこだわりを感じます。