さんち大辞典 [ か ]
加賀友禅

KAGA YUZEN

300年の歴史 日本三大友禅と称される「加賀友禅」とは

 「友禅」という言葉を、皆様も一度は耳にしたことはあるのではないでしょうか?実は、「友禅」という言葉は、人の名前に由来しています。約300 年前の江戸時代、京都で扇絵師として活躍していた宮崎友禅斎が、加賀(現在の石川県金沢市周辺)に居を移し、加賀友禅が誕生しました。京友禅・江戸友禅(東京友禅)と共に三大友禅と称される加賀友禅は、その独自の色使い、品格の高さより、いつかは欲しい憧れの着物として人気を博しています。
 加賀友禅は、フォーマルの最高峰と称されることもあり、訪問着・黒留袖などハレの席の着物を中心に創作されていますが、近年では幅広く着装したいとのニーズも高まり、付下訪問着・小紋、そして紬地に染めを施した着物なども作られています。また、加賀友禅作家が創作することも人気の理由の1つ。作り手の顔が見える着物として、愛着持って大切にご着用されている方も多い着物です。

加賀友禅の魅力

  • 独自の美しい色使い

  • 作り手の顔が見える「加賀友禅作家」の着物

  • 流行に左右されず飽きのこない色柄

<Index>

加賀友禅の魅力の秘密 その1 美しい色を生む「加賀五彩」

幸せへの願いを込めた「加賀五彩」

 加賀友禅は、加賀五彩と呼ばれる「臙脂(えんじ)・藍・黄土・草・古代紫」の5色を基本に加賀友禅作家が独自の色合いを表現していきます。色そのものが作家の技とも言われます。加賀友禅では、この伝統を今もなお受け継ぎ大切にしています。この5色は、風水の思想「四神相応」から生まれた幸せを願う色とも言われており、黄土=中央の黄帝、藍=東の青龍、草=西の白虎、臙脂=南の朱雀、古代紫=北の玄武を染めの世界に表現しています。

加賀五彩

藍

燕脂

燕脂

黄土

黄土

草

古代紫

古代紫

「手描き」で表現される自然美

 京友禅が、京都の公家文化を背景とし、刺繍や箔など多様な技術を用いた豪華絢爛さが特徴であるのに対し、武家文化を背景とする加賀友禅では、金糸や金箔・銀箔を使用しません。柄の外側を濃くし、内側へ向かってぼかしていく「外ぼかし」の手法を用いながら、主に花や葉の美しい自然のモチーフを「手描き」で写実的に表現します。また、柄表現の一つに「虫食い」と呼ばれるものがあります。虫が食べた葉の様子まで細かに表現するものとして、加賀友禅の特徴の1つに挙げられます。

加賀友禅の魅力の秘密 その2 選ばれし「友禅作家」

つくり手の顔が見える着物 加賀友禅

 加賀友禅は、産地組合が認定する落款登録作家のみが創作することができます。落款登録には、作家に弟子入りし、加賀友禅の技法を最低5年以上修行し、師匠に独立するにふさわしいと認められるまで技を磨き続けます。その後、加賀染振興協会会員2名の推薦で認可登録される狭き門。選ばれた作家のみが創ることを許される加賀友禅は、つくり手の顔が見える着物として、愛着を持って大切にお召しになる方も多い着物の1つです。

 加賀友禅作家が制作した着物には、必ず作家の落款がしるされます。落款には作家の美に対する厳しさと情熱、思いやりが込められています。

加賀友禅師事系図

[ 加賀友禅師事系図]

各作家の落款は、協同組合加賀染振興協会のサイトでもご覧いただけます。
サイトを見る ▶

株式会社やまとは加賀友禅作家の後継者育成を支援しています

 現在きもの業界では、つくり手の高齢化と後継者不足が喫緊の課題とされています。株式会社やまと と一般財団法人きものの森は、日本の伝統産地の生産インフラを守るべく、産地の後継者育成事業を支援しています。
 「加賀友禅作家・後継者育成プログラム」は、2017年4月よりスタートし、2年1クールで制作費を支援しています。加賀友禅落款登録作家を目指す志のある候補者を選定し、永続的な加賀友禅の生産インフラを守るため、ものづくりに関する費用を助成しています。プログラム開始以降、2021年現在、3名の加賀友禅作家が誕生しています。

さんち <石川県金沢市>

伝統工芸が盛んな石川県

 加賀百万石として栄華を極め、独自の文化が花開いた石川県金沢市周辺。石川県には、数多くの貴重な文化財が残されているほか、優れた伝統工芸や伝統文化が脈々と受けつがれています。人から人、手から手へと受けつがれた伝統工芸の数々、石川県の風土が育んだ伝統工芸品は国内外からも高い評価を得ています。国指定の伝統的工芸品には、加賀友禅をはじめ、牛首紬、九谷焼、輪島塗、金沢箔、加賀繍、金沢漆器などがあり、国有文化として保護する活動が盛んです。

石川県金沢市

今もなお昔の面影を残す風光明媚な観光の町「古都 金沢」

 加賀友禅のさんち、石川県金沢市には、全国的にも日本三名園として有名な「兼六園」や、情緒溢れる古い街並みの「ひがし茶屋街」や「にし茶屋街」など風光明媚なスポットが数多くあり、春夏秋冬の自然美を堪能できます。また、金沢市内を流れる「犀川」は、文豪 室生犀星がこよなく愛した川としても知られ、かつては加賀友禅の染色後の糊や余分な染料を水のきれいな川で洗い流す「友禅流し」の風景も日常的に見られていました。

兼六園

四季折々の自然美を楽しめる兼六園

茶屋町

観光地として人気が高いひがし茶屋町

犀川

かつては友禅流しが行われた犀川

加賀友禅300年の歴史

加賀友禅の原型

 加賀の国は、友禅染めに適した川や用水に恵まれた風土で、およそ500年ほど前に加賀独自の無地染めであった「梅染」がルーツと言われています。この無地染めに模様が施されるようになったのは、江戸時代初期17世紀中頃。加賀百万石と称され栄華を極めた加賀藩では中央と交流も盛んで、染めの技法である兼房染(けんぼうぞめ)や、色絵、色絵紋などが伝わり、加賀のお国染め技法として染色技術が確率されていきました。江戸時代初期には、加賀の国には約200軒ほどの紺屋(染もの屋)があったと言われます。

加賀友禅の祖 宮崎友禅斎

 今から約300年以上前、もともと加賀友禅が生まれる土壌のあった加賀の国へ、扇絵師として京都で活躍していた宮崎友禅斎が1712年(正徳2 年)に移り住み、従来の加賀染めに新たな意匠と染め技を加えたものが、加賀友禅の始まりと言われています。「友禅」という言葉は、この宮崎友禅斎という人の名前に由来しています。
 宮崎友禅斎が生み出した加賀友禅は、加賀藩の庇護、奨励のもとで育まれ、産業として確立されていきました。

近代・現代の加賀友禅

 昭和28年(1953年)の宮崎友禅斎生誕300年祭あたりをきっかけに、盛り上がりを見せ、昭和30年(1955年)、友禅作家の木村雨山(きむらうざん)が、加賀友禅の作家としてはじめて重要無形文化財保持者 (人間国宝)に指定されたことで、加賀友禅の名前は一躍全国に知られるようになりました。

 昭和48年(1973年)には、協同組合 加賀染振興協会が発足し、落款登録など現在の加賀友禅の条件等が定められ品質の安定・向上がなされました。更に昭和50年(1975年)には国(経済産業省)の伝統的工芸品に指定されました。脈々と伝えられる伝統の技は、今もなお引き継がれておりますが、加賀友禅作家や職人の後継者も不足しており、新たな後継者の育成が必要とされています。

加賀友禅の出来るまで <制作工程>

手描き友禅と板場友禅

 加賀友禅の制作方法は主に、「手描き友禅」と「板場友禅」の2 種があります。手描き友禅は、図案作成から下図、彩色、水洗いなど一貫して加賀作家の熟練した手技で作られていきます。板場友禅は、模様を掘った型紙を使って染める技法で、江戸時代後期ころより用いられ、主に小紋など細かな柄の着物に用いられており、加賀小紋染とも呼ばれています。協同組合 加賀染振興協会では、高品質保持と類似品防止の為、協会発行の産地商標として、手描き友禅には赤ラベル、板場友禅には紫ラベルを貼付しています。

手描き友禅

赤ラベルは手描き友禅の商標です

板場友禅

紫ラベルは板場友禅の商標です

加賀友禅 伝承の手技

<手描き友禅の主な工程>

手描き友禅の主な工程

友禅作家の感性が表れる「図案作成」

 友禅作家が、着物を着る人を思い浮かべながら、草花模様などの自然美をテーマに絵柄を描いていきます。作家の感性がそのまま表れる為、友禅作家の作風・個性を最も反映する工程となります。図案は、着物として着て美しい柄配置となるよう、実際の着物の原寸大で描かれます。

露草の花の汁で図案を白生地に描く「下図」

 着物の原寸大で描かれた図案の上に白生地を重ね、下からライトを当てながら、青花と呼ばれる露草の花の汁で図案に描かれた輪郭を白生地に細い線でトレースしていきます。この青花(露草の花の汁)は、水で流すと消えるという特性があります。

繊細な「糸目糊置き」

 青花で描かれた下絵の線に沿って糊をしぼり出しながら、白生地の上に糊を引いていきます。この工程により、彩色の際に染料が混ざったり、にじみ出てしまうことを防ぎます。糊には、米糊やゴム糊が使われています。
 最終的に染めあがった際、この糸目糊を置いた輪郭に糸目状の線が見られ、これが糸目糊を使う加賀友禅の大きな特徴となっています。糊を出す道具の先端部分は「先金」と呼ばれ、線の太さに合わせて様々な先金を駆使します。先金の先端の穴は、マチ針の先が少し通る程度で、それ以上の大きさになると使い物になりません。

伝統的な加賀五彩を用いた「彩色」

 「臙脂(えんじ)・藍・黄土・草・古代紫」の5色を基本とした加賀五彩という伝統色を組み合わせながら作家独自のレシピで色を作ります。糸目糊置きした輪郭の内側に、筆や小刷毛を使い、手描きで彩色していきます。彩色は、非常に高度な技術と、色彩感覚を要する工程です。また、作家の道具である「筆」は、何度も洗って使用するため筆先が乱れてしまったり、同じ色でも濃淡で数本を使い分けたりする為、メンテナンスも大切。筆を通して作家の道具への拘りが垣間見られます。

かつて金沢の風物詩ともなった「水洗い」

 染めあがった生地を流水に浸し、彩色した部分の糊や余分な染料を洗い流していきます。この工程はかつて「友禅流し」とも呼ばれ、金沢市内を流れる犀川や浅野川で行われていました。この光景は、金沢の風物詩ともなっていました。

下図

〔下図〕

糸目糊置き

〔糸目糊置き〕

採色

〔採色〕

水洗い

〔水洗い〕

<加賀友禅の定義>

加賀友禅は、以下のような定義により高品質が保たれています。

□ 協同組合 加賀染振興協会 加賀友禅技術保持者登録者名簿に「落款登録」されている作家であること

□ 金沢近郊で制作されていること

□ 下記の技術又は技法によって制作されていること

・色彩 及び 図柄は、加賀五彩を基調とした絵画調とすること。

・下絵は「藍花(青花/露草の花の汁)」を用いて描くこと。

・糊置きには、手糸目を用いること。

・黒色に地染めをする場合には、伏せ糊をしないこと。

LINE UP きものやまとの加賀友禅

きものやまとオリジナル新作加賀友禅

デザインのテーマは
「野の花」

加賀友禅作家がそれぞれに表現する写実的な草花模様は、慎ましやかに大切な瞬間を彩ります。加賀五彩に基づきながらも現代の着用シーンに合わせた色づかいと、年代問わずお召しいただける落ち着いた透明感のある地色にこだわりました。
また、白生地のさんちである京都・丹後にて、一からオリジナルの白生地を制作。霞のようにも見えるやわらかな光沢のある地紋は陶器の花瓶をイメージ。動くたび上品にきらめきます。

2021.12.17(金)より販売スタート

「山法師」
作家:小田美知代

「花水木忘れな草」
作家:柚野久美子

「シャクナゲ」
作家:松任いち

「シロヤマブキ」
作家:横山秀一

「こでまりと萩」
作家:宮本由美子

「モクレン」
作家:林多鶴子

「花水木」
作家:奥田雅子

【価格】きもの:352,000円(税込 / 正絹胴裏・共八掛・特選手縫い仕立て・新はじく加工付き)
【お取り扱い店舗】
・きものやまと一部限定店舗 ※取り扱いのない店へのお取り寄せが可能です。
・やまとオンラインストア

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