一期一会・唯一無二の染め
墨流しの歴史は古く、平安時代後期の王朝貴族たちが川に墨を流し模様の変化を楽しんでいたと言われています。その後、宮廷の女人たちが、水盤の水面に墨を浮かべ、その模様を和紙に写しとって、詩歌を書くようになりました。今のように着物に施すようになったのは、戦後、その墨流しを染色の世界で復元させようとした方がいて生まれたとされています。現在、私を含めて墨流しの作家は約4人くらいでしょうか。墨流しの魅力は何といっても「1つ1つが異なる表情を見せ、同じものが出来ない」といった、一期一会・唯一無二の染めというところです。
制作はほぼ私1人で行っていますが、忙しいときなどは、もともと職人だった家内にも手伝ってもらうこともあります。朝早くから仕事を始めても、1日で最大5反くらいしか染められません。オートメーション化された製品とは違い、手作りのものづくりには大変時間を要します。
染める工程では、1反13mほどの反物がそのまま入る水槽を何度も往復します。エアコンをつけると水に浮かべた染料が動いてしまうので、夏でもつけません。暑いときはこの室内も40℃くらいになってしまいますね。そういう意味では、非常に体力をつかう重労働です。