Q. この仕事に就いたきっかけは?
「祖父から親父と続けてきたこの伝統をなんとか続けたい」と思い始めました。
祖父が創業してから私で三代目になります。当初は、この家業を継ぐことは考えていませんでしたが、きっと、そのレールには乗せられていたんでしょうね。普通に就職活動して内定をもらって、いよいよ就職となる3カ月前の1月に、祖父が倒れてしまいました。病院に行ったときには話は出来なかったのですが、親戚たちから、「この仕事をやって欲しいって言っていたぞ」との話を聞き、その辺から揺らぎ始めました。親父からは、継いで欲しいとはひとことも言われませんでしたし、1年は外で飯を食ってこいと、家を出されましたので、外の会社でサラリーマンを1年経験しました。その後、家に戻り家業を手伝うようになりましたが、学生のころから家の仕事を手伝うことはあったので、すぐに馴染みました。
ただ、継いでからが大変でしたね。家に戻ってから6年くらいで、師匠である親父までもが倒れましたので、とにかくがむしゃらでした。他の工場に頭を下げて教えてもらいに行ったりしました。昔の職人の世界では、自分の工房以外に技を見せてくれることなど、まずありませんでしたが、「親父さんには世話になったから、うちでよければ見ていきなよ」と受け入れてくれたことには感謝しかありません。そしてまた、こうした横の繋がりをつくってくれる組合(東京都染色工業協同組合)のありがたさを感じました。
こうした経験をしましたので、私も自分より下の後継者さんには、自分がどんなに大変でも、出来る限りのことはしたいと思っています。私もさんざん先輩方にお世話になりましたので。