大島紬と私のストーリー

大島紬は一生もの。長く愛し着続ける。

「大島紬の魅力は、軽くて、着心地が良く、丈夫で、着付けも綺麗に決まる」なんて、うたい文句のようにみんなが言うけど、本当に実感レベルでそう感じています…。と語る、柏高島屋ステーションモール店の牧山 丈子さんと、柏柳 健太店長。大島紬について語るお二人からは、心底「大島紬が大好き」という気持ちが伝わってきました。長年、大島を愛し、着続けてきたお二人のエピソードをご紹介いたします。

牧山さん
牧山さん

 私にとっての最初の大島紬との出会いは、18歳か19歳の頃、母から買ってもらったアンサンブルの大島でした。私が子供の頃はお転婆でじゃじゃ馬だったから、母に子供の頃にお花とかお茶とか習いに行かされていたんです。母も農家で一生懸命働いて、お正月にはご挨拶周りをするのに、着物を私に着せてくれていました。18歳くらいになった頃に、ちゃんとした絹の着物をと、買ってくれた初めての絹織物が、大島紬でした。その頃は、大島紬って名前は聞いたことはあっても、どんな着物なのかは良く分かっていませんでした。
 その時に、別によいものではないんだけど、濃い赤紫色のウールの帯を母が織ってくれて、大島紬に合わせてくれたんですよ。

 それから数十年が経ち、アンサンブルの大島紬をコートに仕立て直したり、洋服の羽織ものにも作り直しました。それを母が入院した時、病院でパジャマの上に羽織るのに軽いからと、その大島紬で作った羽織ものを持って行ってあげたら、昔、私に買ってくれたことを覚えていたんです。

 私の母はもう100歳を超えているんですが、その大島の着物の話になったら、元気になっちゃって、「やっぱり大島紬って良いわね~」「ほんとに良いものは買っておくもんだね~」なんて。あれだけの年齢になっても、着物の話になると女の子になっちゃうのね。

 こうして何十年も経って、また形を変えて自分のところに帰ってくるって、大島紬ならではのことなんだろうなぁって思います。

牧山 丈子さん

お花を育てたり盆栽が好きで、人にもお花にも愛情を注ぐ柏高島屋ステーションモール店 牧山 丈子さん。

母と大島紬のものがたり

柏柳さん
柏柳さん

 私の初めての大島紬は、一目惚れしたものでした。それこそ、泥染めで、あまり男性が着ないような総柄の大島だったんです。花柄の古典文様で、周りからは、派手だからやめなって反対されたんですけど、実際仕立て上がったら、泥染めで総絣だったせいか、そんなに派手さはなく馴染み、気に入ってずっと着続けました。数年着てから、単衣に仕立て直して、それから羽織、そして最後には陣羽織へと、4回形を変えながら着ました。
 着れば着るほどに風合いも増し、色も馴染んできたりして、その都度その都度、その変化も楽しむことが出来たので、すごく気に入っています。

 今日私が着ているのは、伝統的な「秋名バラ柄」の藍染大島なんです。これも一目惚れでしたね。ずっと永く着られるかな~って思って。いろいろな色柄の大島紬がありますが、なんだかんだで、秋名バラや龍郷柄といった伝統的な柄に行きつきますよね。

 大島紬って、他のさんち紬と比べても、その色や柄のバリエーションがとにかく豊富で、目移りしてしまうほどですが、着て魅力を肌で体感すればするほど、次が欲しくなる着物なんだって思います。とにかく着心地が良く、着ていて気分が良いんです。

柏柳 健太さん

最近、サウナにはまっているという、柏高島屋ステーションモール店 店長 柏柳 健太さん。

4回形を変えてずっと着ています

牧山さん
牧山さん

 私が今日着ているのは、屋久杉染めの大島紬で、かれこれ20年近く着ています。これはとっても気に入っていて、ここぞっていう時には着ているんでけど、年10回ほど着ているとしたら200回は着ているかしらね。大島紬は着やすいから、何か着物で出かけるってときは、色々な選択肢はあるけど、ついつい大島を手にとってしまいます。

 ずっと長く着ていると、まず裏地が擦れてくるので、何回か裏地を取り換えています。裏地の色を変えるだけでも、ずいぶん雰囲気が違ってくるので楽しいですよ。また、長く着ているうちに、裾や袖の先なども傷んできますが、いったん解いて仕立て直したりすると、全然大丈夫。ほんと一生ものの着物ですね。この着物はもう20年近いですが、洋服でそこまで長く着ることってなかなか無いので、これも大島紬の魅力の1つでしょうね。

「大島紬って一生もの」

牧山さん
牧山さん

 大島紬の魅力って、よく「軽さ」だったり「着心地の良さ」「丈夫さ」や、「着付けが綺麗に決まる」といったことを、うたい文句のようにみんなが言うけど、実感レベルで「本当にそうだ!」って思うんです。

 私は会社までの通勤時間が長いものだから、朝ゆっくりしていられないので、朝ごはんとかを作る前に、着物を着ちゃうんです。大島紬を着て、家で家事をしても、動きやすくて全然苦じゃない。
 また、他の着物と比べても着付けのしやすさには驚く方も多いんじゃないかって思います。大島紬だと、おはしょりの部分もキチっと決まるし、腰紐を結ぶ際に指先で軽く押さえていても、ズレないですもんね。

 あとは、着ていてシワになりにくいのも嬉しいですよね。着物の袖の上に重たいハンドバックをかけたりすると、シワになるかなって心配になったりするけど、全然大丈夫。着た後も、ハンガーに一晩かけておいて、次の日に畳んでも、あまりシワになっていないし、旅行や出張でスーツケースに入れて持ち運ぶ時なんかも、かさばらないからとっても良いです。

柏柳さん
柏柳さん

 ほんとそうですよね!私も昔、先輩から「軽くて、しなやかで、着やすいよ!」って教えてもらいましたが、本当にその通りでした。私自身、他さんちの着物も好きで色々着ているのですが、大島紬は、柔らかすぎないし、硬すぎない、ほんとに「ちょうど良い」感じがします。しなやかさの中に芯があるような着心地とでもいうのでしょうか。長年着ていますが、膝やお尻も出ず丈夫なんだなってことも実感しています。

 あと、コーディネートのしやすさも、魅力の1つではないでしょうか。帯合わせがとにかくしやすく、色々なスタイルで楽しめるから、飽きがこないですよね。

大好きな大島紬の話しに花が咲くお二人

大好きな大島紬の話しに花が咲くお二人

うたい文句のように、軽さとか着心地の良さって
言われるけど、本当に実感レベルでそう感じます

牧山さん
牧山さん

 長く働かせていただいていて、おかげさまで産地への研修にも参加させていただいたんです。向こうの人たちの心が、ほんとに温かいというか、作り手さんたちの絆のようなもの感じることができました。絆って糸へんですよね。絣や紬も糸へん、経糸と緯糸が織り成すように、つながりや温かみを感じました。
 それぞれの工程が分業だから、次の工程の方への思いやりがあって、変な染め方したからやりにくいのよ、というような感覚は誰一人持たないのよね。人のせいに全くしない温かな島の人々なんですよね。
だから、す~ごく人が優しいの。

奄美大島 龍郷町 町長さん、前田紬工芸の前田さん、同じく柏店のスタッフと、龍郷町役場にて。

奄美の人は、絆で結ばれていて、みんな優しい

牧山さん
牧山さん

 以前、やまとで染めには欠かせない「テーチ木」を植樹したことがありましたよね。確か1999年9月9日のことだったと思います。あれから23年が経ちましたが、テーチ木染めに適した材料となるには、樹齢が30年は必要とのことでしたので、あと7年後かしらね。植樹した場所は海側にほど近いところだったから、タンニン酸も良い具合に多く含まれて、良い染料になるんじゃないかと思います。

 自分が30年前に植樹したテーチ木で染めた大島紬を着られたら、なんてロマンティックなことでしょう。

やまとは、テーチ木染めの材料となる「テーチ木」の植樹を行いました。

やまとは、テーチ木染めの材料となる「テーチ木」の植樹を行いました。

自分で植えたテーチ木で染めた大島紬を
いずれ着るのが夢です

大島紬を着る。それは愛を着るということなんだ
株式会社やまと